2007年08月30日

ホントは簡単!会話の授業(最終回)「最後は自分のノウハウを築く。」

 さて、これまで「ハードル競走」型会話指導について、授業の準備から評価の仕方にいたるまで(半ば思いつくままに)書いてきました。


 書くべきことはだいたい書いたので(かなり漏れてるでしょうけど)、今日は言い残したことを(これまた思いつくままに)書いてみようと思います。


 今回紹介したタスクは、どちらかというと一問一答的な、割とシンプルなコミュニケーションスタイルです。


 なので、想定した学習者は、初級から中級レベルです。


 上級レベルでもやってできないことはないと思いますが、これぐらいのレベルになると、段落レベルの会話力養成が求められます。


 彼らの知的欲求を満たすことを考えても、もう少し複雑な仕掛けが必要ではないかと、漠然と考えています。


 しかもこのタスクは、依頼とか勧誘といった交渉力を養うのには向いていますが、


 趣味について語り合うとか、何気ない雑談といった会話そのものを楽しむコミュニケーションには向きません。(そういう会話にハードルはいらない。)


 どんなタスクにも強みもあれば限界もあります。


 要はそのタスクの強みと弱みを十分理解する必要がある、ということです。


 それから、このシリーズは会話の授業が超苦手な先生を思い浮かべながら書きました。


 教師も人間だから得手不得手があって当然ですが、できれば仕事であまり嫌な思いはしたくない。


 そんな状況から抜け出すきっかけというか突破口を提供できればいいかな、と思って書いた次第です。


 だから、これを読んできた方の中には、


 「もっとおもしろい方法があるのに・・・。」


 とか、


 「まだ、詰めが甘いな。」


 と感じた方もいらっしゃるかもしれません。


 そういう方は、「私って、ちょっとだけ先輩先生かも・・・。」と思っていただければと思います。


 ところで、私が会話の授業のどこにおもしろさを感じるかというと、


 やっぱり、ハプニングです。


 こちらが事前に話題とそれに見合ったハードルを考えて、「多分このハードルなら、こう応えるだろう。」と予想するわけですが、


 それとは全然違った予想外のことを言ってくる。


 「そうくるか?」


 で、クラス全体が爆笑の渦となり、


 と同時に、「この時こそ!」のとっておきの表現を(ちょっと難しいものでも)紹介すると、学習者は余計な説明なしでダイレクトに吸収する。


 このあたり、他の授業ではなかなか見られない、会話の授業ならではの醍醐味です。(なかなかないですけどね。)


 だから、会話の授業について言えば、あまり精密な仕掛けではなく、ある程度ゆったりした授業設計のほうがうまくいくようです。


 あまり細かく設計すると、窮屈すぎて結果的に会話を殺してしまうから。


 それから、会話の授業をモノにするコツは、(というか何でもそうでしょうけど。)


 最終的に自分なりのノウハウを築くということだと思います。


 先人のワザをパクりつつ、自分なりの味付けを加えていき、さらに現場で練っていく。


 そうやって、少しずつ自分なりのノウハウ、自分にしかできない授業を築いていくことが大切ではないかと思います。(その方がやってておもしろい。)


 「ハードル競走」型会話指導も、そのための踏み台にしていただければありがたいです。


 「会話なら、●●先生の授業が最高!!」


 学習者からそう言われたら、100年の苦労も吹っ飛ぶというもの。


 少しずつ、できるところから頑張っていきましょう。(私も。)


 ◇   ◇   ◇


参考文献:
『OPIの考え方に基づいた日本語教授法―話す能力を高めるために』

『ACTFL‐OPI入門―日本語学習者の「話す力」を客観的に測る』


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2007年08月29日

ホントは簡単!会話の授業(9)「どうやってテストするか?−評価の観点」

 本日も取り急ぎ。


 さて、皆さんは会話のテストの時、どんな項目を立てて採点しますか。


 というのは、「どういう項目を立てるか」は、とりもなおさず「教師がコミュニケーションのどういう側面を重視しているか」に繋がる大事なことだからです。


 例えば、文法、語彙、発音、内容、発話量、・・・


 もちろん、こういった項目も大切です。


 いくらいいことを言っても、発音がめちゃくちゃならかなり苦しい会話になるでしょうから。


 ところで、ここでちょっと考えたいのは、


 人はなぜコミュニケーションをするのか。何のためにコミュニケーションをするのか。


 ということです。


 正しい文を言うため?


 正しい発音をするため?


 内容のいいことを言うため?(私はこれに一票!)


 そう考えてみると、なぜコミュニケーションをするのかというと、


 相手の考えをしっかり知るためであり、


 その上で自分の考えを相手にしっかり伝えるためであり、


 そんなやりとりを通じて、自分の思い通りに相手に何らかのアクションを起こさせるためではないでしょうか。


 具体的に、それは・・・


 友人から試験科目のノートを借りることであり、


 アルバイトの面接で好印象を与えてアルバイトをゲットすることであり、


 好きな人といっしょにカラオケに行くことであるわけです。


 当然、採点方法もそれを反映したものの方が、はるかに現実に沿っている。


 学習者がどんなときに自分の会話力に自信や喜びを感じるか、を考えてみても納得のいくことではないかと思います。


 そう考えると、文法とか語彙とか発音とかは、あくまでもそういった目的を果たすための手段に過ぎないと言えるわけです。


 「そんなの、当たり前じゃないか!」(そんな声が聞こえてきそうです。)


 にもかかわらず、どういうわけか試験となると、文法とか発音とかに重点をおいてしまう。


 一種の職業病なのか、あるいは今までダイレクトに会話の目的達成度を数値化する有効な手段が考えつかなかったからなのか?


 「ハードル競走」型会話指導は、こういったコミュニケーションの目的達成度を、単純に、越えたハードルの数で測ることができます。


 配点は、100点満点のうち70点ぐらいをそれにあてる。残りの30%を文法とか発音とかの配点にあてる。


 もし、試験の時、こちらの問いかけに学習者が意味不明な文法で応えてきたら、「?」と何も言わずに待ってみる。


 それを察して、正しい文法の文や、あるいは別の言葉に言い換えたりすれば、それも立派なコミュニケーション能力。


 それでもってハードルを越えれば、問題なくクリア。(まるでバイクの実技試験。)


 会話の授業が苦手という方の多くは、「どう評価したらいいのかわからない。」という考えをお持ちのようです。


 確かに、突き詰めて考えていけば、それなりに奥の深いものがあると思います。


 でも、ある程度パターン化できる部分もあるかと思います。


 参考にしてみてください。


 ◇   ◇   ◇


さて、次回の「ホントは簡単!会話の授業」は、・・・


 明日、考えよっと。


 どうぞ、お楽しみに。


参考文献:
『OPIの考え方に基づいた日本語教授法―話す能力を高めるために』

『ACTFL‐OPI入門―日本語学習者の「話す力」を客観的に測る』


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2007年08月28日

ホントは簡単!会話の授業(8)「ハードル競走型会話指導実例集−初級編」

 本日は、取り急ぎ。


 これまで、「ハードル競走」型会話指導について説明してきました。


 今日は、その実例として初級のタスク例をご紹介します。


 入門〜初級の場合、日本語で会話をすること自体、学習者にとっては大きなハードルなので、学習者がまだ慣れないうちはあまり凝ったハードルにせず、


 メインテキストにあるような会話を使って、数課分の復習活動といった位置づけで授業をするといいかもしれません。


 ただ、場面設定だけは、学習者の興味をひきつけるものにすると効果的です。


指導例:アルバイトの面接

ロールカード(このタスクなら、いらないかも。)

A:あなたは学生です。今日はアルバイトの面接です。店長
  の質問に応えてください。

B:あなたはお店の店長です。学生の面接をします。学生に
  質問してください。


=   =   =

<会話例>

A:よろしくおねがいします。(椅子に座る)

B:名前は?

A:シイダ・キザノシです。

B:国は?

A:×△です。

B:外国人登録証、ある?

A:はい。(外国人登録証を出す。)

B:あ〜。今年来たばかりなんだね。
  日本語、大丈夫?

A:時々分からないことがありますが、日常会話なら大丈夫
  です。(この言い方、授業で導入。)

B:今まで日本でアルバイト、したことある?

A:いいえ、初めてです。

B:あ、そう。
  アルバイトは、いつできる?

A:月ようびから金ようびは、9時から2時半まで授業があ
  ります。その他は、いつでも大丈夫です。

B:あ、そう。うちは平日は忙しくないんだよ。日曜日は休
  みだし・・・。まあ、週1回だけど、がんばってよ。

A:はい、よろしくお願いします。(この言い方も、授業で
  導入。)

B:あ、え〜と、名前なんだったっけ?(←不意打ち質問)

A:えっ、あっ、シイダキザノシです。

B:そうだったね。じゃ、これで終わります。


(その後、「何曜日にアルバイトをしますか?」と書いた4択問題のワークシートに記入させる。)

=   =   =


 「これなら、私もやったことある。」


 そういう方、多いかもしれません。


 そう、「ハードル競走」型会話指導は、何も特別な指導方法ではないのです。


 だから、誰でもできます。


 「アルバイトの面接」は、日本国内で勉強する留学生にとってはかなり関心の高い場面です。


 ちなみに私が授業でこれをやった時、学習者は抜群に食いついてきました。授業も盛り上がった、盛り上がった。


 よかったら、使ってみてください。


 ◇   ◇   ◇


さて、次回の「ホントは簡単!会話の授業」は、・・・


 明日、考えよっと。


 どうぞ、お楽しみに。


参考文献:
『OPIの考え方に基づいた日本語教授法―話す能力を高めるために』

『ACTFL‐OPI入門―日本語学習者の「話す力」を客観的に測る』


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2007年08月27日

ホントは簡単!会話の授業(7)「このツッコミが学習者を鍛える」

 前回のブログでは、会話の場面に沿ったロールカードを作成し、学習者の会話力を引き上げる仕掛けとしてのハードルを作るところまでやりました。


 授業の準備としては、これでほぼOKです。


 というわけで、いざ授業へ突入!!


 授業の進め方はいろいろあると思いますが、私の場合、こんな感じで進めます。


 1.扱う話題について軽く話し合う。

 2.ロールカードのA役の方だけ配る。(掲示用に拡大し
   たものを用意してもよい。)内容を確認する。

 3.学生の一人を引っ張り出して、B役を教師が演じなが
   ら、ロールプレイをやりながら、「こんな時、なんて
   言う?」とクラス全員を巻き込みながら、文型・表現
   を学習者のレベルに合わせて随時導入しながら、適宜
   板書しながら、談話をつむいでいく。

 4.ロールカードのB役の方を配り、学習者同士ペアで練
   習させる。一通り終わったら役を交代する。


 5.教師が、さっきと違う学生を一人(時間があれば数人
   )引っ張り出して、同様にモデルロールプレイをし
   てクリニック。ここでさらにおもしろい文型や表現を
   加えてもよい。(この後、ペアを変えてさらに練習さ
   せてもよい。)

 6.勉強した文型や表現をおさらいして終わり。


 で、ここからが本題。


 どのように指導をすれば、学習者の会話力は伸びるか。指導のポイントはどこか?


 前回のブログで、私はこんなことを書きました。

=   =   =   =

 ロールカード作成のコツですが、(タスクの内容にも依りますが)私は以下の点は盛り込むようにしています。


1.場所(=図書館)
2.背景(=来週テストがある)
3.AとBの人間関係(=友達)
4.場面・タスク(=ノートを借りる/断る)
=   =   =   =


 実は、これが指導のポイントとして大いに使えます。


 つまり、


1.場所をわきまえた物言いができているか。

2.背景を理解した上で、適切な判断ができているか。

3.人間関係をわきまえた表現ができているか。

4.タスクをちゃんと遂行できているか。


 だから、授業では、


「図書館なんだから、もっと静かに話しなさい。」とか、

「友達もいないし、試験も近いんだから、必死でお願いしなさい。」とか、

「友達同士なんだから、『貸していただけませんか。』は丁寧すぎます。」とか、

「相手がダメといっても、諦めないでいろいろアイデアを出して、借りられるまで頑張りなさい。」とか、

 いろいろツッコミを入れることで、学習者を鍛え上げることができるわけです。


 そして、さらにさらに会話の指導という点から言えば、上の4項目だけでなく、私はさらに以下2つの点も注意して指導するようにしています。

 5.非言語動作(ノンバーバル・コミュニケーション)

 6.談話構成


 5については、例えば「アルバイトの面接を受ける」というタスクの場合、面接を受けに来た学生の態度−椅子に座るタイミングとか、座った時の姿勢とか、顔の表情とか−というのが非常に大切なわけです。


 だから、そういった部分も漏らさずツッコミを入れながら指導する。


 6については、例えば「試験前にノートを借りる」というタスクの場合、「○○の授業のノートを貸してください。」といきなり本題に入ることはないわけで(学生、よくやりません?)、


 「ちょっと、今いい?」とか「実は、ちょっとお願いしたいことがあるんだけど。」といった導入部分を入れなければあまりにも唐突過ぎます。


 同様に、本題の後も「よかった。おかげで助かったよ。」と言った締めの表現があるのが自然でしょう。


 このあたり、学習者・教師ともに意識の死角になりやすいだけに、しっかりツッコミを入れて指導します。


 会話の指導のポイントは、考えればいくらでも出てくると思いますが、ひとまずこれだけ押さえておけば十分だと思います。


 ただ、一つ気をつけていただきたいのは、調子に乗って、学習者の自尊心を傷つけたり、不快にさせるようなツッコミは絶対しないこと。


 指導は、あくまでも誠心誠意が基本です。


 会話の指導に自信がない方は、予め「このタスクだと、学習者はどんな会話をするだろうか。」と授業をシュミレーションしてみて、


 「じゃあ、こんなツッコミができるかな。」と、ある程度予測した上で授業に臨むといいかもしれません。


 この授業に慣れてくると、ロールカードとハードルの用意だけしておけば、いちいちシュミレーションしなくてもなんとかなるようになります。


 そうなるとしめたものです。


 それから、授業のあと、どんな文型・表現を指導したかリストアップしておいてください。(試験の設計の時に必要です。)


 ◇   ◇   ◇


さて、次回の「ホントは簡単!会話の授業」は、・・・


 (8)「ハードル競走型会話指導実例集−初級編」です。


 どうぞ、お楽しみに。


参考文献:
『OPIの考え方に基づいた日本語教授法―話す能力を高めるために』

『ACTFL‐OPI入門―日本語学習者の「話す力」を客観的に測る』


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2007年08月26日

ホントは簡単!会話の授業(6)「レベルの調整はハードルの高さと量」

 さて、前回は場面設定が会話の授業ではとても重要だってことを書きました。


 次に用意することは、場面に合ったロールカードを作るということです。


 例えば、中級レベルの留学生が出会う場面として「試験前にノートを借りる」があるとすると、

〈ロールカード:中級〉

A:ここは図書館です。来週テストがあります。ですが、あ
  なたは授業にあまり出ていません。友達のBさんにノー
  トを借りてください。

B:ここは図書館です。来週テストがあります。友達のAさ
  んがあなたのノートを借りに来ました。できるだけ断っ
  てください。


 と、ざっとこんな感じになるでしょうか。


 ロールカード作成のコツですが、(タスクの内容にも依りますが)私は以下の点は盛り込むようにしています。


1.場所(=図書館)
2.背景(=来週テストがある)
3.AとBの人間関係(=友達)
4.場面・タスク(=ノートを借りる/断る)


 で、今度はハードルを決めます。


 このハードルの設定がタスクのキモの部分。非常に重要です。


 場面設定もタスクのレベルに影響しますが、ハードルの設定こそがタスクのレベルを決定的なものにします。


 ハードル設定によるレベル調整の基本は、その高さと量です。


 「量」については、とりあえず10個ぐらい用意しておくといいと思います。後は学習者の出方によって調整してください。


 「高さ」とはハードルの難易度な訳ですが、ハードルの種類は概ね以下の3種類ぐらいかなと考えています(これはあくまでも私のレパートリーです。)


5.疑問文
6.「それ、無理。」的発言
7.不意打ち質問
8.相手の言動へのツッコミ


 「5.疑問文」は最も一般的なハードルです。


 もちろん、質問の内容によってハードルの高さを調整することもできますが、疑問文のタイプでもかなり調整は可能です。


a.Yes-No疑問文
b.選択疑問文
c.疑問詞疑問文
d.「なぜ/どうして」疑問文(いわゆる理由要求の疑問文
  )
e.「それ、どういうこと?」疑問文(いわゆる説明要求の
  疑問文) 


 質問のレベルでいうと、aが一番やさしくeが一番難しいのが分かるでしょうか。


 だから、(タスクのレベルによりますが)タスクの始めはa〜cぐらいにして、時々d(あるいはe)を持ってくるといいかなということになります。


 しかし、疑問文ばかりのハードルだとまるで警察の職務質問みたいで、ちょっと不自然。そこで次のハードルが、


6.「それ、無理。」的発言


 です。


 これは、Aの要求を頭から突っぱねるような発言で、例えばこういうのです。


A:ノート、貸して。
B:いつ?
A:今。
B:今?今日、持ってきてないんだけど。(←これ)
A:え!・・・じゃあ、明日はどう?


 ハードルのレベルはそこそこ高いんじゃないかと思います。Aは即座に対案を出さなければならないからです。


 中級ぐらいになると、この手のハードルをじゃんじゃん出していくと、結構面白いタスクになると思います。


 次に「7.不意打ち質問」です。


 例えば、「試験前にノートを借りる」というタスクで言うと、一通り会話のやり取りを行った後、Bが


 「え〜と、で、何の講義のノートだったっけ?」


 と、会話の最初の方の内容を再度確認するようなタイプの質問です。


 質問の内容自体はそんなに難しくないはずですが、会話の流れと全く関係なく出される、文字通り不意打ちの質問である分、Aにはそれなりの対応力が求められます。


 最後は「8.相手の言動へのツッコミ」です。


 例えば、


A:ノート貸して。
B:いやだよ。僕も使いたいんだから。
A:お願い!他に友達いないんだ!
B:静かに!ここは図書館だよ。(←ここ)


 自分の言動を不意に注意されると、得てして人は動揺するものです。


 このハードルの狙いは、動揺しないでちゃんと対応できるかどうかという点です。


 これは、タスクの中に1つあるかないかぐらいでいいと思います


 いかがでしょうか。


 後は、実際に学習者の顔を思い浮かべて、「この質問なら、学習者は応えられるかなあ。」と考えながら、「応えられる。」「頑張ったら応えられる。」、「どうかなあ?」ぐらいのハードルを用意するといいと思います。


 おっと、最後に一言。


 「ハードルは、言葉は易しく、内容は難しめ。」


 まずは、前回の宿題の場面にあったハードルを10個、考えてみてください。


 とても貴重な財産になると思います。


 ◇   ◇   ◇


さて、次回の「ホントは簡単!会話の授業」は、・・・


 (7)「このツッコミが学習者を鍛える」です。


 どうぞ、お楽しみに。


参考文献:
『OPIの考え方に基づいた日本語教授法―話す能力を高めるために』

『ACTFL‐OPI入門―日本語学習者の「話す力」を客観的に測る』


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2007年08月25日

ホントは簡単!会話の授業(5)「会話の授業は場面が命!」

 前回は、「ハードル競走」型会話授業の基本パターンを紹介しました。


 簡単に言うと、Bはハードルを敷く役、Aはそのハードルを越える役。


 OPIだとタスクによっては「学習者同士でできるかな?」というものもたまにありますが、役割分担をこれぐらいに単純化しておくと、学習者同士に任せても大丈夫です。(最悪、Bのロールカードにハードルをリストアップしておき、ランダムに出すように指示しておいてもいいわけです。)


 ただ、この「ハードル競走」型会話授業は、だいたい中級レベルまでがいいとこかな、と今のところ考えています。(あくまでも私のチョウ個人的な経験値での判断)


 というのは、中級までの会話力というのは、レベルの差こそあれ、概ね日常ありがちな事柄についてうまく対処できるかがポイント。


 一方、上級以上のレベルになると、「原発の是非」とか「性の社会的役割」といったかなり抽象的な話題について、論理的かつ段落レベルで自分の意見が言えるかどうかがポイントになってきます。


 ちょっと、ロールプレイにしにくいかな。


 さてさて、ともあれこの「ハードル競走」型会話授業を設計する時に一番重要なのは、場面シラバスをベースにするということです。


 ここは非常に重要です。


 「こんな時、どうする?」と、まず場面を示してやると、学習に説得力が出て、学習者はスッと会話に入っていけます。


 で、その場面に依頼とか断りといった機能(タスク)を乗っければ、それがハードルを越える原動力になります。


 で、機能にあった文型を示してやると、首尾よくハードルを越えていく。


 優先順位を図示するとこんな感じ。(左に行くほど大事。)


 場面>機能>文型


 『みんなの日本語』に慣れている方にとっては、ちょっと違和感があるかもしれません。優先順位が見事なくらい逆だからです。


 でも、よくよく考えてみれば、私達が会話する場合も、文型から入るって事はないですよね。やっぱり場面があって、その場面にあった表現を口にしているわけで、


 そう考えると、「場面>機能>文型」は至極理に適っているといえると思います。


 次に、授業設計で大切なのは、


 どんな場面を取り上げるか?


 ということです。


 でも、これはそんなに難しいことではありません。


 学習者が日頃出会う、言葉を使わなければならない場面を取り上げればいいのです。


 日頃どう言ったらいいのか戸惑ってしまうことが多いような場面なら、なおよしです。


 例えば、学習者が留学生なら「友達にノートを借りる。」とか・・・。


 そこで、今回より新企画。


 実践力養成と授業ネタの共有を目的に、今回から宿題を出します。


 このメルマガをお読みの皆さんは、基本的に全員参加です。課題はコメント欄に書いてください。


【宿題】
 あなたのクラスで会話授業をする場合、どんな場面が考えられますか。1つあげなさい。(学習者のタイプ・レベルも明記のこと。)

 まだ、クラスを受け持っていない方は、初級レベルだとどんな場面が考えられますか。1つあげなさい。


 楽して他人のアイデアをパクるのはなしです。皆さん、考えてみてください。


 ◇   ◇   ◇


さて、次回の「ホントは簡単!会話の授業」は、・・・


 (6)「レベルの調整はハードルの高さと量」です。


 どうぞ、お楽しみに。


参考文献:
『OPIの考え方に基づいた日本語教授法―話す能力を高めるために』

『ACTFL‐OPI入門―日本語学習者の「話す力」を客観的に測る』


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2007年08月24日

ホントは簡単!会話の授業(4)「実録!ハードル競走」

 今日は、「ハードル競走」型会話授業が授業でやるとどうなるか、その実際をご覧(?)いただきます。


 といっても、今回は実際の授業の様子といっても、「ハードル競走」とはどういう意味なのか、その基本的なパターンです。


 実際の授業はもっと複雑になるはずです。


 でも、基本的なパターンさえ押さえておけば、授業ではパターンを幹としていくらでも枝葉を膨らますことができるし、脱線してもすぐ元に戻すことができます。


 「ハードル」とは、会話タスクの途中途中に作ったちょっとした障害です。で、それを乗り越えられるかどうかで学習者の会話力をみるわけです。例えば、こんな感じです。


タスク(ロールプレイ):「友人をカラオケに誘ってください。」

(A:学生、B:教師)

A:○○さん、今日カラオケに行きませんか?

B:いいですねえ。
  あ、でも、今日アルバイトがあります。(←ハードル)

A:え・・・!じゃあ、明日は?(第1ハードルクリア!)

B:あした?あしたは大丈夫です。
  あ、でも、おかねがありません。(←ハードル)

A:え!・・だ、だいじょうぶですよ。
  あのカラオケ屋は500円ですから。
               (第2ハードルクリア!)

B:そうですか。いいですねえ。
   あ、でも、私日本の歌はわかりません。(←ハードル)

A:歌わなくてもいいです。
  聞くだけでいいですよ。(第3ハードルクリア!)

B:そうですか。よかった。
   でも、私お酒はダメです。(←ハードル)

A:は?・・だ・・大丈夫。ジュースがあります。
           (第4ハードルクリア!)

B:そうですか。じゃあ、いきましょう。(←ゴール)


 分かりましたでしょうか。これが「ハードル競走」型会話授業の基本です。


 授業では、最初に教師×学習者でモデルをやって、学習者がつまづくたびに「この時、なんと言いますか。」と問いかけ、語彙や文型を導入しながら談話を作っていきます。


 その後、ペアで会話練習をさせます。


 このやり方だと、タスクのレベルを調節することで大体の学習者に対応できますし、会話の試験も採点しやすくなります。


 感じとしては、質問やツッコミで学習者を右に左にいなすようなイメージです。


 いなされて驚いたりちょっと困ったりする学習者の顔を楽しめるようになったら、教師としてはしめたものです。(人間としていかがなものか・・。)


 会話の授業が苦手な方は、上の例を一人でぶつぶつ言いながら何度かシュミレーションしてみてください。


 すぐ慣れます。


 ◇   ◇   ◇


さて、次回の「ホントは簡単!会話の授業」は、・・・


 (5)「会話の授業は場面が命!」です。


 どうぞ、お楽しみに。


参考文献:
『OPIの考え方に基づいた日本語教授法―話す能力を高めるために』

『ACTFL‐OPI入門―日本語学習者の「話す力」を客観的に測る』


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2007年08月22日

ホントは簡単!会話の授業(3)「ハードル競走って”なんちゃってOPI”」

 会話の授業の進め方は「ハードル競走」をイメージすると分かりやすい、と前回書きました。


 ところで、会話の授業といって真っ先に思い浮かぶのが、「ACTFL−OPI」(「アクトフルオーピ−アイ」と読みます。)ではないでしょうか。


 これから述べる「ハードル競走」型会話授業は、このOPIで使われるワザをふんだんに使わせていただいています。


 「うぉー、いきなり難しそう。」


 そう思うかもしれませんが心配いりません。簡単です。


 私自身、OPIに関してはズブの素人です。テスターでもなければトレーニングを受けた経験もありません。


 せいぜい下の参考文献を読んだ程度です。(ちなみに下で紹介している参考文献は2冊とも本当にいい本です。買って読んで損はありません。)


 だから、「ハードル競走」型会話授業は、私が本を読んで、授業で使えそうな(自分がやり切れそうな)ところだけ都合よく拝借した、


 いってみれば”なんちゃってOPI”です。


 それぐらいの気安さです。


 その程度のもですから、苦手意識を持っている方でも必ずできます。要は慣れです。


 でも、効果は絶大です。


 授業のベースはにロールプレイです。学習者にロールカード(課題)を渡して、いきなりやらせます。


 そうすると、学習者はどこかで必ず、言葉が出てこないとか、文法は正しいが不自然な言い方をしてしまったとか(これを「言語的挫折」と言います。)といったことが出てきます。


 その時に、正しい言い方、適切な表現を提示すると、学習者は勢いよくそれにパクつく。(なんかパン食い競走みたい。)


 これを「タスク先行型ロールプレイ」といいます。


 ポイントは、


 いきなりやらせる(タスク)→文型・文法等の指導(シラバス)


 という順番です。


 この発想は、とても重要だし、しかも画期的です。


 『みんなの日本語』とは、逆のパターンです。


 『みんなの日本語』の指導パターンは、


 文法・文型の指導(シラバス)→練習A〜C、会話練習(タスク)


 それだけに、なまら経験のある教師にとっては、スッと入りにくいかもしれません。


 でも、慣れればどうということはありません。


 「ということは、学習者がどんな間違いをするかによって、指導する文型が変わるってこと? それじゃ、授業の準備のしようがないじゃん。」


 そうです。出たとこ勝負です。(というか、緻密な準備はむしろ不要。)


 「それって、かなりきつい。」


 そう思うかもしれません。でも、いざとなったら、


 「その時は、△△△とは言わないで、◇◇◇と言います。」


 と、難しい文法の説明なしに、ひとかたまりの表現として教えてもOKです。


 そう考えれば、気楽なものです。


 とにかく、OPIに基づいた「タスク先行型ロールプレイ」で授業をすると、


●ハラハラ、ワクワク感を演出できて、授業が活発になります。

●自分の不十分な部分をオンデマンドで勉強できるので、満足度が高まり、積極的に授業に参加するようになります。

●(結果的に)学習者の会話力の不十分な部分から優先的に教えることができます。


 これだけのメリットがあるなら、使わない手はないのではないでしょうか。


 ”なんちゃって”の割りには、結構イケます。


 ◇   ◇   ◇


さて、次回の「ホントは簡単!会話の授業」は、・・・


 (4)「実録!ハードル競走」です。


 どうぞ、お楽しみに。


参考文献:
『OPIの考え方に基づいた日本語教授法―話す能力を高めるために』

『ACTFL‐OPI入門―日本語学習者の「話す力」を客観的に測る』


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2007年08月21日

ホントは簡単!会話の授業(2)「苦手克服の鍵はシンプルな授業パターン」

 今回は取り急ぎ。


 前回は、テキストとある程度距離を置くことが、会話の授業を成功させる上で大切なポイントであると書きました。


 実際、テキストに集中すると、学習者はテキストの文字にとらわれてしまい、会話どころではなくなってしまいます。


 テキストを伏せて学習者同士の会話活動に行こうとしても、学習者は何かにつけテキストに頼ろうとするので、やっぱり会話が続かない。


 そう考えると、こと会話の授業に限っていえば、学習者にテキストを持たせるというのは、あまりそぐわないのかもしれません。


 「ただでさえ、会話の授業が苦手なのに、その上テキストまで取り上げられたら、どうしていいのかわからない。」


 確かにそうです。では、どうするのか。


 結論から言えば、頼るべきはテキストではなく、授業パターンです。


 「どんなテーマでも、このパターンに沿ってやれば、授業の準備もスムーズだし、授業そのものもうまくいく。」


 そんな授業パターンを持つことが、とても重要だと思います。


 しかも、できるだけシンプルなもの。(基本はシンプル。これ鉄則!)


 シンプルな授業パターンを持っておけば、何よりも「これに頼れば大丈夫。」という安心感・心のゆとりが出てきます。


 心にゆとりが出てくると、少しずつアドリブが出るようになってきます。


 シンプルであればシンプルであるだけ、その指導方法をマスターするのも早い。


 一定の技をマスターすれば、また心にゆとりが出てきて自分なりに工夫しようとします。


 その工夫が授業でハマれば、喜びに変わる。


 好循環です。


 つまり、さっさと必勝パターンを身につけるということが、とても大切なのです。


 では、その必勝パターンとは何か?


 イメージは、「ハードル競走」です。


 「あれ? 障害物競走じゃなかったの?」


 すみません、こっちのほうが適切な比喩です。


 今日はここまで。


 時間のある方は、下の参考文献をパラパラパラっと見ておいてください。


 ◇   ◇   ◇


さて、次回の「ホントは簡単!会話の授業」は、・・・


 (3)「ハードル競走って”なんちゃってOPI”」です。


 どうぞ、お楽しみに。


参考文献:
『OPIの考え方に基づいた日本語教授法―話す能力を高めるために』

『ACTFL‐OPI入門―日本語学習者の「話す力」を客観的に測る』


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ホントは簡単、会話の授業(1)「なぜ苦手なのか?」

 さて、今回から新連載。「ホントは簡単!会話の授業」を始めます。


 以前、このブログでも「会話の授業は障害物競走?」で私なりの会話の授業のやり方を紹介しました。


 この連載では、もう少し詳しく解説していきます。


 ところで、会話の授業は好きですか?


 「すっごい好き。やってたら止まらなくなる。」


 という方は、問題ありません。じゃんじゃんやってください。(もしかしたら、ある意味危険かも。)


 ですが、特に経験の浅い先生にとっては、


 「うわー、どうしよう?」

 「どうしたらいいのか分からない。」


 というのが正直なところではないでしょうか。(かつての私もそうでした。)


 で、そんな心得で授業をしてもうまくいくわけがなく、


 「会話が全然盛り上がらない。」

 「気がついたら、テキストを読んでるだけの白けた授業で終わってしまった。」


 と、負のスパイラルにはまり込んでしまい、ますます苦手意識を持ってしまう。


 「だって、私、アドリブ利かないし、話すの苦手だもん。」(落ち込まないで!みんな始めはそんなもんです。)


 なぜ、会話の授業はうまくいかないのでしょうか。


 「ちゃんとテキストに沿って授業をやっているのに・・・」


 そこ!! 実はそこに問題があります。


 会話の授業は、テキストに忠実になればなるほど(言い換えればテキストを舐めるように授業をすればするほど)、うまくいかないようになっています。(本当はどの科目もそうなんですが・・)


 なぜでしょう。


 そのやり方だと、会話するには、あまりにも窮屈だからです。


 そのやり方だと、レールを敷かれているのが分かって話す意欲を失うからです。


 最近は、優れた会話教材がたくさん出ているので、テキストに沿って授業をしてもそれなりにいい授業になるかもしれません。


 でも、優れた教材であればあるほど、紙面に出ていない部分に細かな仕掛けが隠されているものです。


 その仕掛けを活かすためには、テキストとある程度距離を置いて授業をしなければなりません。


 テキストべったりだと、仕掛けに必要なドッキリ感やワクワク感が損なわれてしまいます。


 テキストべったりだと、気がついたら読解の授業になってしまいます。


 でも、特に経験の浅い教師の場合、どうしてもテキストべったりなってしまいがちです。(実際、テキストから離れるのは、結構勇気のいること。)


 それが証拠に、聴解が苦手という人はあまりいないのではないでしょうか。


 テキストべったりで(だいたい)済むからです。


 そんなところに、会話の授業アレルギーが生まれる原因があるのではないかと思います。


 
posted by kanjifumi at 00:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 授業−私のやり方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月19日

学習者の出席率を劇的に引き上げる協働(もどき)学習(最終回)「言葉こそ最強の武器」

 これまで、学習者の出席率を劇的に引き上げる仕組みを紹介してきました。


 基本的には、今まで述べたようなことをしていけば、クラスの雰囲気はかなり変わってくると思います。だから、ぜひ実践してみてください。


 ただ、今まで紹介してきたものは、あくまでも仕組みの大枠です。


 学習者が、この仕組みというレールの上を加速度的に滑っていくためには、さらなる工夫が必要です。


 しかし、これ以上言うことはできません。


 なぜなら、その工夫とは「クラスの学習者一人一人のキャラにあわせた、その教員ならではの関わり方・演出」だからです。


 私は、あなたのクラスの様子も分からなければ、あなた自身のキャラクターも分かりません。


 かくいう私も、まだまだ修行中。やればやるほど思わぬ発見があり、また自分自身も見えてくる。


 だから日本語教師はやめられない。


 で、ここでひとつ、私が実践している私なりの演出を紹介します。(よかったら参考にしてください。)


 それは、学習者の日本語のレベルに合わせて、各界で大成した方の言葉や諺を折に触れ紹介するというものです。


 例えばこんな感じ。

=  =  =

T:日本の言葉に、「土俵の真ん中で相撲を取れ。」というの
  があります。横綱は土俵の真ん中で相撲をとります。一番
  安全だからです。下手な人は、すぐ一番危ない土俵の端の
  ほうに行って相撲をとります。そしてちょっと押されて負
  けるのです。

  皆さんにとって、土俵の真ん中は出席率100%です。土
  俵の端は80%です。いつも80%の人は、ちょっと休ん
  だだけですぐ土俵から出てしまいます。出たら負けです。
  だから、たとえ大変でもいつも土俵の真ん中にいるように
  しなさい。

=  =  =


 私は、折に触れ、こんな感じで学習者にいろいろな名言を紹介しています。


 その時の学習者にぜひ伝えたいと思うメッセージを、「今、この言葉を知れば絶対役に立つ。だから、聞け!知れ!」という感情を込めてプレゼンします。


 すると、「そう、そう。」とか「先生の言う通りです。」と言ってくる学習者が出てきます。


 クラスがそれらの言葉で少しずつまとまるようになってきます。


 クラスの士気が高まります。


 始めのうちは締りのなかった学生も、斜に構えて我流を通していた学生も、次第に素直になっていきます。


 思うに、学習者は私達が考えている以上にメンタルな部分でのサポートを求めているのではないかと思います。


 我々教師というのは、得てして「日本語をどう教えたら効果的なのか。」というテクニックな部分にばかり目を向けがちです。


 もちろん効果的なテクニックを追求することも大事なことです。


 ですが、学習者が求めているのはそれだけではなく、進むべき方向を照らしてくれる言葉、心を支えてくれる言葉、くじけそうな心を癒してくれる言葉、ではないかと思います。


 そんな言葉をシャワーのように提供し、そしてそれらの言葉のどれかに学習者は共感し、それをきっかけに教師と学習者との信頼関係が築かれ、協働学習が加速度的に進んでいく。


 私は「言葉こそ最強の武器」だと、つくづく思います。


 言葉ほど、人や社会に影響を与えるツールはないと思います。


 その最大最強のツールの正しい使い方(できれば魅力的な使い方も)を学習者に提供するのが、我々日本語教師の仕事ではないかと思います。


◇  ◇  ◇

 長らく続きましたこのシリーズも今回が最終回です。


 いかがだったでしょうか。


 「すごいねえ。」「まだまだ青いな。」「どんだけ〜。」


 ご意見・ご感想をいただけるとありがたいです。
posted by kanjifumi at 23:37| Comment(4) | TrackBack(0) | 授業−私のやり方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月18日

学習者の出席率を劇的に引き上げる協働(もどき)学習(7)「驚異のSKJ方式」

 今回は、学習者にさらに肯定的なフィードバックを送る仕掛けを紹介します。


 別に難しいものではありません。いたって簡単です。でも、効果は絶大です。


 以前、ポイント制について紹介しました。(っていうか、毎回触れてますね。)


 これです。


DSC04728.JPG


 で、これを使います。


 中間試験が終わった時点で、各グループのポイントを確認します。


 で、一番ポイントの高かったグループをみんなの前で表彰します。


 ちゃんと賞状も作って、記念写真も撮ります。


 例えば、こんな感じです。


 表彰式.bmp


 (すみません。本人達の了解を得ていないので目元を隠したら、ピンクでもやっぱり変な感じになりました。実際はみんなうれしそうに写っています。)


 で、この写真をどうするか?


 私のクラスでは、教卓の向かい側の、教室の一番後ろの壁の目立つところに貼っておきます。期末試験までずっと貼っておきます。


 すると、どうなるでしょう?


 日本語の教室というのは、いろいろな先生が入れ替わり立ち代り授業をしにやってきます。


 出席をとって、パッと顔を上げると目の前に表彰された3人の写真がある。


 「あれ、何?」


 先生は必ずそう尋ねます。


 すると、写真に写った学生は、


 「実は、かくかくしかじかで、表彰されたんですよ。」


 と、得意げに説明します。


 すると、それを聞いた先生は、


 「それはすごいね。がんばったんだねえ。」


 などと褒めるでしょう。そんな時、学生は決まって得意げにこう言います。


 「授業に出席するのは当たり前ですよ。学生なんですから。」


 この言葉ほど、教師が言うとあまりにも空しく、学習者が言うや途端に力強く響く言葉があるでしょうか。


 この言葉を聞いたほかの学生は、いったいどんな気持ちになるでしょうか。


 こんなシーンが、少なくとも1週間、新しい先生が入ってくるたびに繰り返され、


 そのたびに、表彰された学生は自尊心を満たすことができるわけです。


(それによって、表彰された学生がますます欠席できないように仕向けていくのが狙いの一つなのですが、まだそこまでの効力はありません。)


 この企画をやった後の学習者の話によると、私のクラスで1人、写真に気がつかなかった先生がいたそうで、


 いつまでたっても気がつかないものだから、学習者の方が痺れを切らし、


 「写真を見ろ。」と言わんばかりに、後ろの壁を指差したのだとか。


 先生がやっと気がつくと、「実は、かくかくしかじかで・・・」と当の学生が自慢げに説明し出し、クラス全体が大爆笑になったのだそうです。


 まさに効果絶大!!


 いずれにしても、学習者のいい行動については、できうる限り肯定的なフィードバックを返してやる。


 それによって、「いいことをすれば、必ず報われるんだ。」という風土を醸成する。


 これを私は、SKJ方式と呼んでいます。


 SKJとは・・・


 「んせい るたび まんする」(やっぱり日本語です。ちょっと狙いすぎたかな?)


 一度、やってみてください。


 ◇   ◇   ◇


さて、次回の「学習者の出席率を劇的に引き上げる協働(もどき)学習」は、


 (最終回)「言葉こそ、最強の武器」です。


 どうぞ、お楽しみに。


参考文献:
D.W.ジョンソン他『学生参加型の大学授業
ゾルタン・ドルニェイ『動機づけを高める英語指導ストラテジー35


posted by kanjifumi at 23:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 授業−私のやり方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月17日

学習者の出席率を劇的に引き上げる協働(もどき)学習(6)「罪を憎んで、人を憎まず」

 今日は、週間出席率が80%を下回った場合、定期試験当日でも関係なくペナルティをさせるか、というお話です。


 別府大学文学部国文学科日本課程(以下、本学日本語課程)では、1期に2回の定期試験−中間試験と期末試験−を行い、その総合点に平常点を加味して成績を出しています。


 例えば前期の場合、4月10日前後に通常授業が始まり、7月25日前後で終わります。


 授業日数はだいたい71日前後、コマ数にするとだいたい210コマ。(ということは、大学の授業日数は年間でも約140日前後。実は休みのほうがはるかに多いのです。)


 とすると、中間試験はだいたい6月の第1週目、期末試験は7月第4週目に行うことになります。


 で、これまでも何度か言ってきたように、授業開始日から中間試験の前日まで、あるいは中間試験の翌日から期末試験の前日までの出席率がそれぞれ80%を越えていれば、首尾よく定期試験を受ける権利が得られるというわけです。


 そこでちょっと気になるのが、週間出席率が80%を下回った場合、定期試験当日でも関係なくペナルティをさせるか、ということです。


 本学日本語課程では、これまで定期試験は火・水の2日に分けて実施するのが慣わしになっています。


 で、私の場合、担当クラスの授業は、通常火・水・木です。


 だから、定期試験の前週に8割切った学生がいた場合、それを公表するのは試験当日1日目になってしまう。


 しかし、これから試験だというのに、その10分前にペナルティなどやらせては、意味もなく学生を動揺させるだけでしょう。


 第一、試験当日ともなれば、もはや週間出席率にこだわること自体全く意味がない。ここで重要なのは、累積出席率が80%を越えているかいないか。


 越えていれば試験を受けるだけだし、越えていなければペナルティどころか受験資格を失ってしまいます。


 こんな時、どうするか。


 私が今までやってきたことを再現すると、こんな感じです。


= = = = =


 (おもむろに出席簿を開けながら、いつものように。)


「はい、では先週の出席状況を発表します。え〜と、○○さんと△△さんですね。」


(教室に、一瞬冷たい空気が走る。学習者の顔が一瞬こわばる。)


「ですが、今回はペナルティはありません。もう試験ですから。


 これを日本語で『恩赦(おんしゃ)』と言います。」


(と言いながら、「恩赦」(ルビ付)を板書する。)


(学習者は急いで電子辞書で調べ、意味が分かるや、「オーッ。」と安堵のため息をつく。緊張した顔に笑顔が漏れる。)


「ではみなさん、試験、頑張ってくださいね。」


= = = = =


 だいたいこんな感じです。


 いかがでしょうか。


 試験の時は、やはり試験に集中させたいもの。


 また、ルールはあくまでもみんなが気持ちよく目標を達成するための仕掛けに過ぎません。


 効力の及ぶ範囲というものも心得ておく必要があるのかな、という気がします。


 ◇   ◇   ◇


さて、次回の「学習者の出席率を劇的に引き上げる協働(もどき)学習」は、


 (7)「驚異のSKJ方式」です。


 どうぞ、お楽しみに。


参考文献:
D.W.ジョンソン他『学生参加型の大学授業
ゾルタン・ドルニェイ『動機づけを高める英語指導ストラテジー35


posted by kanjifumi at 23:21| Comment(0) | TrackBack(1) | 授業−私のやり方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月16日

学習者の出席率を劇的に引き上げる協働(もどき)学習(5)「チェック!チェック!チェック!」

 5日間お休みをいただきました。ありがとうございました。


 さて、早速本題。


 これまでの流れをざっとおさらいすると、


(1)仕組みを学習者に説明してコンセンサスを得る。

(2)学習者を好きな者同士でグループ分けをする。

(3)グループごとにペナルティを決めさせる。

(4)ポイント制を導入して、肯定的フィードバックを行う。


 でした。


 これでお膳立てはバッチリです。事前にこれだけの仕掛けを作っておけば、「後は適当に学習者に発破をかけていればなんとかなりますよ。」と言いたいぐらい、とても楽です。


 この後は、この仕組みにちゃんと学習者が絡み続けているか、変なほころびがでていないか、チェックする必要があります。


 具体的には、まず毎週末に週間出席率と累積出席率を計算して、80%を切るような学習者がいないかチェックします。


 もし80%を切るような学習者がいれば、授業の時に公表し、その学習者のグループ全員にペナルティをさせます。


 そして、そのグループに新たな用紙を渡してさらなるペナルティを決めさせます。


 と同時に、メンバー全員が80%を越えたグループも公表し、ポイント表に印鑑を押していきます。


 また、復習テストが70点以上あった学生についても自己申告させ、ポイントを加算していきます。


 だから、授業の時には印鑑を忘れずに持っていく必要があります。


 また、私の場合、この時ちょっとした小道具を使っています。


 名付けてマツイ棒ならぬ「はくしゅ棒」。


V?.bmp


 ポイント表に印鑑を押す時、私はこのはくしゅ棒をさっと出します。


 私がこの棒を出すと、学習者は強制的に拍手をしなければなりません。


 始めのうちこそ、みんな恥ずかしがってあまりしませんが、そのうち慣れてくると、自然に拍手をするようになります。


 これが、結構クラスの雰囲気アップに効果があります。


 実は、このアイデアは私のオリジナルではありません。


 東京のある有名なタクシー会社が社員のモティベーションをアップさせるために実践しているもので、


 それをテレビで見て、「これは使える!!」と、授業に取り入れた次第です。


 いいものはどんどん取り入れる。


 これぞ、TTP方式!!*。


(*TTP方式とは、「ってい きに クる。」の略です。)


 こういったわくわく感や新鮮さの演出も、学習者のモティベーションを維持するためには大切な要素だと思います。


 こうして頻繁にチェックを行うことで、学習者の出席率の維持を図っていくわけです。


 一見大変そうに思えるかもしれませんが、基本的にはしっかりした仕組みの中に学習者を流し込んでいるので、そんなに大変な作業ではありません。


 チェックしながら、適当に学習者に発破をかけたり褒めてあげたりしてください。


 ◇   ◇   ◇


さて、次回の「学習者の出席率を劇的に引き上げる協働(もどき)学習」は、


 (6)「罪を憎んで、人を憎まず。」です。


 どうぞ、お楽しみに。


参考文献:
D.W.ジョンソン他『学生参加型の大学授業
ゾルタン・ドルニェイ『動機づけを高める英語指導ストラテジー35


posted by kanjifumi at 23:50| Comment(0) | TrackBack(1) | 授業−私のやり方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月10日

学習者の出席率を劇的に引き上げる協働(もどき)学習(4)「ポイントセール大作戦」

 前回は、(3)「ペナルティを決める」についてお話しました。


 学習者が決めたペナルティは、下の写真のように教室の一番目に付く所に貼ってあります。


DSC04725.JPG


 アップにするとこんな感じです。


.bmp


 ちょっと分かりにくいかもしれませんが、雰囲気はお分かりいただけるのではないかと思います。(写真をクリックすると大きくなります。)


 後期からは、ちゃんとワードかなんかでフォームを作ろうと思います。


 さて、読者の皆さんの中には、


 「学習者に自己責任でペナルティを決めさせたのだから、あとは毎週出席率をチェックして、ダメなグループにはペナルティをさせればいいんじゃないの?」


 と思われる方がいるかもしれません。


 それで十分というクラスもあるでしょう。


 ですが、私が担当した20歳前後のクラスでは、これだけの仕掛けで定期試験までもたすのはかなり困難でした。


 始めのうちはみんな気が張っているので、ペナルティなどという仕組みがいらない位、ちゃんと出席します。


 しかし、やがて息切れの時期が来ます。


 ある学生が2〜3回続けて休むと、それが周りの学生に伝播し、バタバタッと数人休むようになります。


 私が今まで受け持ったクラスの場合は、入れ替わり立ち代わり休むような感じだったので、たちどころに80%を切るという感じではありませんでした。


 しかし、クラスの雰囲気はどんどん悪くなっていきます。


 ペナルティという否定的フィードバックは、数週間に一組ぐらいだと際立つので効果がありますが、毎週起こるようになるともはや効果は半減します。


 そんな状況を何とかしようとしてペナルティを強化するとかえって逆効果。学習者に無力感を学習させてしまいかねません。


 学習者を正しい方向に導くためには、否定的なフィードバックだけではダメで、肯定的フィードバックが必要なのです。


 そこで私が考えたのが、


 先週の出席率がグループのメンバー全員80%超えた場合は、そのグループに3ポイント、ついでにメインテキストで課ごとに行う復習テストで70点以上取った学生には一人当たり1ポイントを与える。


 そして、グループ別ポイント表をペナルティシートの上に貼って、「ポイントが一番多いグループには後で何かいいことがありますよ。」と言って、グループごとで競わせる(=自尊心をくすぐる)ようにしたのです。


 下が実際に使用したポイント表です。


DSC04728.JPG


 「そんな幼稚な方法が通用するのか?」


 そう思う方もいるかもしれません。


 しかし、これが割と効果ありです。


「Cグループ頑張ってますねえ。 おや?Dグループ、大丈夫ですか?頑張ってくださいね。」


 などと、適度に発破をかければそれだけで学習者は頑張ります。


 また、自分の学力にあまり自信のない学習者が、たまに復習テストで70点以上取ると、


 「先生、いい点取ったからポイントください!!」


 と、言ってきたりします。


 普段やっている何気ない一つ一つの作業にハリが出てきます。


 大切なことは、否定的なフィードバックだけでなく、学習者のいい行動に対しては小さなことでもきちっと肯定的なフィードバックを与えるということなのです。


 自分のやった「いいこと」をちゃんと認めてもらえれば、それだけで人は嬉しくなるものです。


 この仕掛けによって、たとえクラスの雰囲気が悪くなりそうになっても、肯定的な仕掛けがそこかしこにちりばめてあるので、


 スルスルッとうまく潜り抜けもとの肯定的な学習環境に引き戻すことができるのです。


 かくして、学習者のモティベーションを定期試験まで維持することができるのです。


 ◇   ◇   ◇


さて、私、お盆休みのため15日までお休みをいただきます。


 この次の更新は16日です。


 次回の「学習者の出席率を劇的に引き上げる協働(もどき)学習」は、


 (5)「チェック!チェック!チェック」です。


 どうぞ、お楽しみに。


参考文献:
D.W.ジョンソン他『学生参加型の大学授業
ゾルタン・ドルニェイ『動機づけを高める英語指導ストラテジー35


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2007年08月08日

学習者の出席率を劇的に引き上げる協働(もどき)学習(3)「ペナルティを決める」

 今回こそ、さらっと・・・。


 グループ分けが決まったら、今度は出席率80%を下回った場合のペナルティを決めます。


 このペナルティが、出席率を劇的に引き上げる最大最高の仕掛けです。


 だから、ここはきっちりと進めなくてはなりません。ここで教師がミスを犯したらすべてが台無しです。


 といっても、難しいことは何もないので心配いりません。


 まず、各グループにA4サイズのコピー用紙を1枚ずつ配ります。


 紙には予めマジックか何かで、上方に「Aグループ」とか「Bグループ」とか、各グループの名前を書いておいてください。


 それから学生にこう言ってください。


 「これから、出席率が80%より下がった時のペナルティを考えます。

 ペナルティは、皆さんがグループで話し合って決めます。」


 そしておもむろに、こう板書してください。


 「もし、週間の出席率が80%より下がったら、メンバー全員で__________をします。」


 そして、学生にこう言ってください。


 「___________にペナルティが入ります。

 どんなペナルティにするかメンバーで話し合って決めて、その紙に書いてください。

 決める時、必ずメンバー全員がいいと思うペナルティを決めてください。

 メンバーの中で一人でもやりたくないという人がいたら、そのペナルティはダメです。もう一度始めから話し合って決めてください。

 それから、ペナルティを決める時、次の4つは守ってください。

 1.教室の中でできること。

 2.5分ぐらいでできること。長くても10分。

 3.お金を使わないこと。

 4.下品なものではないこと。

 決まったグループから、みんなの前で発表します。

 ペナルティが軽くて、他のグループからブーイングが出たら、そのペナルティはダメです。

 また始めから考えてください。

 他のグループからOKがでたら、その紙の半分から下のところにメンバー一人一人のサインを書いて、私に出してください。

 はい、始め!!」


 そうすると、それぞれのグループは面白がって様々なペナルティを書いてきます。


 ちなみに私のクラスの学習者が書いてきたのは・・・。


・女性は腕立て伏せ20回。男性は50回。

・一人当たり4分間、クラスメート全員をマッサージする。

・他の国の歌を歌う。

・家で餅を作ってみんなに振舞う。


 ここで面白いのは、どのグループの学生も自分達が決めたペナルティよりも、他のグループの決めたペナルティに目が行って妙に興奮している点です。


 まだ自分の問題として受け取れていないんですね。


 フフフ、笑っていられるのも今のうちさ・・・。


 すべてのグループのペナルティが出揃ったところで、その紙を教室の一番目立つところに並べて貼ってください。


 そして、こう言ってください。


 「私はとても楽しみですね。

 Aグループの腕立て伏せがとても見たいです。

 Bグループに4分間、足をマッサージしてほしいです。

 Cグループの中国人には「オ〜ナラ、オ〜〜ナラ」(「チャングムの誓い」のオープニングテーマ)を歌ってほしいですね。

 みなさん、学校を休みたかったら休めばいいんですよ。

 後はみんなの前でペナルティをすればいいんです。

 明日から休みますか?」


 そうやって、学習者の闘争心(?)を煽れるだけ煽ってください。


 とりあえず、これで「ペナルティを決める」は終わりです。


 大切なことは、前回も言いましたができるだけ学習者に選択肢を与えてやる、と同時に責任も担わせる、ということです。


 これにより、学習者は俄然やる気を出して取り組みます。


 それからもう一つ大切なことは、活動にゲーム的な要素を取り入れることによって、ワクワク感を演出するということです。


 出席率を上げるための指導をしようとすると、得てして教室全体が説教部屋のようになり、常習犯不在、ちゃんと出席しているまじめな学生に注意してしまった結果、意欲のある学生のやる気さえ削いでしまうって事態になりがちです。(最悪!こんなクラスならむしろ欠席したい。)


 目指すは、どっちに転んでも明るい雰囲気を維持できて、しかも学習者を正しい方向に導く仕掛け作り。


 もちろん、教師は常に笑顔です。


 いかがでしょうか。こんなクラスなら自然と「行きたい!」って思いません?


 さて、次回の「学習者の出席率を劇的に引き上げる協働(もどき)学習」は、


 (4)「ポイントセール大作戦」です。


 どうぞ、お楽しみに。


 やっぱりさらっとじゃないじゃん・・・。


参考文献:
D.W.ジョンソン他『学生参加型の大学授業
ゾルタン・ドルニェイ『動機づけを高める英語指導ストラテジー35


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2007年08月07日

学習者の出席率を劇的に引き上げる協働(もどき)学習(2)グループ分け

 昨日はえらく長々と書いてしまいました。今回からさらっと・・。


 学期初め、日本語課程全体のオリエンテーションが終わったら、クラスごとのオリエンテーションをします。


 ここでは、自己紹介やら授業の進め方の説明やら出席率の説明やら使用教科書の注文取りやらをします。(この辺はどこの学校も似たり寄ったりではないかと思います。)


 その後、クラスの学生を1グループ3〜4人ぐらいでグループ分けをします。


 分け方は「好きな人同士/友達同士」。ここはとても大切な所です。


 グループ分けというと、知らない人同士、違う国の人同士でグルーピングしようとするのが常套手段ではないかと思います。


 人間関係を広げるのが目的であれば、それはとても有効な手段です。


 しかし、今回に限ってはむしろ逆効果です。


 このグループは、欠席グセに歯止めをかけるための仕掛けです。


 彼らはこの先、期末試験までこのグループのメンバーと運命をともにします。


 メンバーのうち、誰か一人でも出席率が80%を下回れば、メンバー全員が罰を受けなければなりません。


 逆に、メンバー全員が出席率をクリアすれば、全員でその喜びを分かち合うことができるわけです。


 だから、出席率を維持するためには、学習者に「私が休んだら、大切な友達にまで迷惑が及んでしまう。」という気持ちを、常に持たせなければなりません。


 また、同じ国の仲良しグループの方が、何かあった場合、何の抵抗感もなく母国語でスムースに連絡を取りあうことができます。


 グループ分けはそのための仕掛けです。


 もし仮に違う国同士で組ませてしまうと、人間関係がないため抑止力が強く働かないばかりか「やっぱり○○人は時間にルーズだ。」といったような、妙な偏見を学習者に抱かせてしまいかねません。(こうなると最悪です。)


 だから、仲のいい友達同士で組ませる方がはるかに効果があるわけです。


 もちろん初めてのクラスですから、全員が全員うまく仲良しグループに収まるわけではないかもしれません。それはそれで構いません。(そんな時は、人間関係を築かせるためにもグループごとで軽く自己紹介をさせてください。)


 大切なことは、グループ分けにしても何にしても、できるだけ学習者に選択の余地を与えるということです。


 このプログラムの最大の目的は、「学習者に責任ある行動をとってもらう。」ということです。出席率はその一つの指標です。


 学習者にできるだけ選択の余地を与える。そして、選んだことによって生じた問題は選んだあなたの責任ですよ。ちゃんと責任を持って処理してくださいね。そういうことです。


 こういう理屈は、学習者に選択の余地を与えなければ成り立ちません。


 だから、もしグループ分けのときに、学生が「先生が決めてください。」と言ってきても、必ず突っぱねて彼ら自身に決めさせてください。


 そうでないと、将来学習者が何か大きな問題にぶち当たった時、教師の判断を必ず責任逃れの言い訳に使います。


 こうして首尾よくグループ分けができたら、AチームとかBチームとか適当に名前をつけた後、学習者に向かってこう言ってください。


「このグループは運命共同体(板書したほうがいいかも)です。

 もし、メンバーのうち一人でも出席率80%を切ったら、メンバー全員が罰を受けなければなりません。

 メンバー全員です。

 一人だけ逃げることはできません。

 でも、メンバー全員が80%以上だったら、みんなで喜びます。

 これもメンバー全員です。

 だから、もしメンバーの誰かの出席率が危なくなったら、他のメンバー全員で助けてあげてください。

 そうしないと、メンバー全員が罰を受けなければなりません。

 メンバー全員です。」


 グループ分けは、ひとまず以上です。


 ここで一つ注意していただきたいのは、このグループ分けは、教室での座席位置とは全く関係がないということです。


 グループごとに座る必要は全くありません。


 私の場合、オリエンテーションの前日に、予め学習者のネームプレートを机に貼るようにして、事前に座席を指定させておきます。


 座席の決め方は、できるだけ違う国同士、違う性別同士になるようにします。


 そのような低コンテキスト環境にしておいた方が、日本語の授業を進める上では何かと都合がいいからです。


 だから、グループのメンバーが教室内でてんでんばらばらに座っていても所詮同じ教室内、特に問題はありません。


 日本語の勉強は知らない人同士、出席管理は仲良し同士。このダブルネットワークによって、取りこぼしや落ちこぼれを生まない強力なクラスマネージメントの実現を目指すわけです。


 さて、次回の「学習者の出席率を劇的に引き上げる協働(もどき)学習」は、


 (3)「ペナルティを決める」です。


 どうぞ、お楽しみに。


 全然さらっとじゃないじゃん・・・。


参考文献:
D.W.ジョンソン他『学生参加型の大学授業
ゾルタン・ドルニェイ『動機づけを高める英語指導ストラテジー35


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2007年08月06日

学習者の出席率を劇的に引き上げる協働(もどき)学習(1)別大日本語課程について

 具体的な指導方法をいう前に、今日は舞台となる別大日本語課程についてご説明します。


 というのも、背景を知っている方がわかりやすいと思うからです。


 もし、不明な点があれば、些細なことでもコメントください。できうる限りご説明します。その方がより明確に理解できると思います。


 別府大学には、日本語課程と呼ばれる組織が2つあります。別科日本語課程と国文学科日本語課程(以下、本科日本語課程)です。


 別科日本語課程は、全国の多くの私大で採用されている形態の日本語課程です。


 学校形態は各種学校、基本的には大学とは別形態の学校ということになるので、厳密に言うとそこに所属している留学生は大学生ではありません。また、例えば単位の互換などは原則できないことになっています。(少なくとも私の認識では。)


 一方、私が属している本科日本語課程は、その名の通り国文学科の中に組み込まれた日本語課程。従って、ここで学ぶ留学生はれっきとした大学生です。


 また、この課程で取った成績は(国文学科の学生は専門科目として、他学科の学生は留学生科目として)すべて単位として認定されます。


 本科日本語課程は、国文学科の学生はもちろん、他の学科の学生も含め、常時120人前後の留学生が受講しています。(一応国文学科の組織ですが、そういう意味では留学生センターのような役割も担っています。)


 クラスは、ここ数年Aクラス〜Hクラスまでの8クラス。Aクラスが初級レベルでHクラスが上級レベルです。1クラスはだいたい15名〜20名前後といったところです。


 授業は1コマ90分で1日3コマ。それが月曜日から金曜日まで。従って計15コマ/週、日本語を勉強するわけです。


 入学式は4月と9月の年2回。新入学留学生は、日能試1級合格者以外、学期の初めにプレイスメントテストを受け、成績によって各クラスに振り分けられます。


 所属学科や学生の日本語力にも寄りますが、留学生は半年から1年半、この本科日本語課程で集中的に日本語を勉強し、その後それぞれの専門に進みます。


 本科日本語課程では、定期試験が各学期ごとに中間試験と期末試験の2回あり、両者の点数の合計がその期の成績に反映される仕組みになっています。


 本科日本語課程では、出席管理をかなり厳し目(あくまでも主観的な判断)にやっています。


 例えば、授業開始日から中間試験の前日までの出席率が80%を越えていないと、中間試験を受けることができません。


 同様に、中間試験の翌日から期末試験の前日までの出席率が80%を越えていないと、期末試験を受けることができません。


 本科日本語課程では、週15コマの授業が1セットになっているので、出席率が80%を切った場合、出席不足により日本語課程に関するすべての試験が受けられず、結果15コマ分の授業の成績がすべて「失格」と記され、その期の単位は0となってしまいます。


 だから、私達は毎週毎週、週末になるとその週の出席率と授業開始日からの累積出席率を計算し、いずれかの出席率が80%を切ると、本人への指導はもちろん、学生が所属する学科の担当教員に連絡し、指導してもらうよう促します。


 だから、入国管理局にある学生の就学状況を報告する場合も、授業日誌と合わせて、かなり迅速かつ細かな内容の書類を提出することができます。


 おかげさまで入国管理局からもそれなりの高い評価をいただいているそうです。(事務局の方の話によると。)


 学生の立場で考えれば、おそらく想像していた大学生活とはずいぶん違うかもしれません。


 週15コマの日本語集中プログラム。そして徹底した出席管理。まるで高校なみです。


 しかし、それは「一日も早く自分の専門で日本人と張り合えるだけの日本語力をつけて欲しい。」という我々の切なる願いの表れであり、


 6年前、本学の学生によって引き起こされた山香強盗殺人事件を2度と起こしてはならないという、執念の表れでもあるのです。


posted by kanjifumi at 22:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 授業−私のやり方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする