2007年09月19日

留学生による自作紙芝居読み聞かせ(20)「授業最終回」留学生は貴重な人的資源だ

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 7月5日(火)は、最後の組3名が幼稚園で読み聞かせを行いました。これで幼稚園での活動はすべて終了したことになります。


 この日は、幼稚園から帰ってきた後、最終日の打ち上げパーティの式次第や役割分担を決めることになっていました。結局、お菓子やジュースを飲みながらの歓談の合間に、2つほどゲームをすることでまとまりました。


 そこで、私は紙芝居作成の際にいろいろと助けていただいた芸術文化科の学生を招待すべく、担当の先生と連絡を取りました。


 また、読み聞かせの練習に参加してもらった国文学科の学生にも同様に連絡を取りました。


 ところが、国文学科の学生については参加できるという連絡を受けたものの、芸術文化科については専門の授業が追い込みの時期であるということから、後日、参加できないとの連絡がありました。


 こうなると交流パーティも単なる内輪の会となってしまい、本講義の最終にはあまりふさわしくない感じ。


 できれば、最後まで何らかの形で交流活動をしたいのですが、かといって、最終授業までもうあまり時間はありません。


 そんな折、ちょっとしたことがきっかけで、思わぬ交流活動ができることになりました。


 私が、いつものように昼食を取ろうと大学前の喫茶店に行ったところ、偶然、短期大学部食物栄養科の先生にばったり会いました。


 その先生の話によると、急遽留学生の授業を一回だけ担当することになった。来週の火曜日、留学生相手に釜揚げうどんと冷やしうどんを作って試食会をする、とのこと。しかも、私の授業と全く同じ時間帯でした。


「うちの学生連れて、遊びに行ってもいいですか。」

「どうぞ、どうぞ。」


 かくして、最終日は短大の留学生(といってもほとんどが日本語課程に在籍する中国人留学生)といっしょにうどんを試食することに。もちろん、国文学科の日本人学生も参加。


 いよいよ7月12日、最終日。事前に提示しておいたレポートの課題を留学生から回収し、予定が変更したことを話した後、全員で調理室に向かいました。


 調理室では、麺の生地をこねている真っ最中で、そろそろ茹でにさしかかろうとしていました。


 ある留学生は、一方で生地をこねながら、一方で湯を沸かし、そうこうしながら食器の準備なども手際よくこなしていました。


「こういう時って、日本人の学生より留学生のほうが動きがいいのよね。」


 もう一人の短大の先生が言った。


 またある留学生は、担当の先生の言われるままに生地の上にビニールシートをかけて足で踏みながらこねていました。


 「足で踏んだものを食べるとは……。」


 そんな顔をしていた。


 日本に来てうどんを食べたことのない留学生はほとんどいません。ですが、足を使って麺を作るなど想像すらできない学生も多く、その意味では貴重な異文化体験です。


 寸胴の湯が沸いたら麺を入れます。10分ほどたつと麺は茹であがりました。つゆの入ったお猪口と箸を持ってまわりを囲っていた学生達は、面が茹であがると一斉に食べ始めました。


 釜揚げうどんの後には冷やしうどんも食べたが、それでも麺が余ったので、食物栄養の先生がビニール袋に麺を小分けにし、学生に持って帰らせました。


 こうして、最後の授業は終わりました。私の中では授業をやり終えた達成感というよりは、むしろ「やっと終わった。」という安堵の気持ちでいっぱいでした。


 さて、最後の授業から1週間たった今、ここですこしだけ本講義を振り返ってみたいと思います。


 今の率直な感想から言えば、授業の進め方にしても学習者の取り組み方にしても、初めてにしては、まあ及第点かな、という感じです。


 そもそもこの企画の狙いというのは、授業という枠組みの中で、普段なかなか接触できない日本人とどこまで交流が図れるか、ということでした。


 結果的には、国文学科はもとより他学科の日本人学生と交流することもできたし、何よりも園児との交流を実現できたことは大きな収穫だったと思います。


 そればかりか、何らかの形で地域に貢献できる機会を得られたことは、留学生にとっても大きな自信につながったに違いありません。


 昨今、留学生を人的資源と見る見方は、あちこちでよく聞かれるようになりました。ですが、実際は日本語が不十分であるという理由から単純労働に終始するケースが非常に多い。それでは、あまりにもさみしすぎる。(って、思いません?)


 考えてみれば、留学生はみなそれぞれ自国の文化を背負って日本にやってきているわけで、


 それは、言ってみればより豊かに生きるための生活の知恵といってもいいものです。


 その知恵を最大限引き出して、日本人との地域交流につなげていけば、結果的に日本人にとってもより豊かな生活空間を得ることになるし、留学生にとっても地域における存在意義が出てくるというものではないかと思います。


 単純労働に埋もれさせるにはあまりにももったいないのです。


 今回の「留学生による紙芝居の読み聞かせ」は、このことをどこまで実証できるかについての一つの試みでした。


 私がこの活動を通じてつくづく感じたのは、留学生に知的な社会的役割を担わせるということが、地域交流、国際交流には非常に重要であるということ。そして、留学生はそれに十分足るだけのこれまた非常に貴重な人的資源であるということです。


 来期もまた、新しいメンバーでこの活動を進め、地域交流の輪を広げていきたいと思います。


(本シリーズは、私が2005年前期に大学の授業「応用日本語U」で行った「留学生による自作紙芝居読み聞かせ活動」の授業記録です。また、この活動を論文にまとめました。よかったらご覧ください。)


 さて、私篠崎は中国出張のため、20日から23日まで本ブログをお休みいたします。次回は24日です。


 どうぞお楽しみに。
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2007年09月18日

留学生による自作紙芝居読み聞かせ(19)「授業9日目(後半)」最後はパーティにしよっか

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 それから、例によってまず3人の留学生に読み聞かせをさせ、終わると残りの2名に交代させました。


 1人の留学生の前には6〜7人の園児がみなちょこんと座って、それぞれ話を聞いていました。


 園児の中には紙芝居を指差しながら、いろいろと質問したり自分なりに解説を加える子も。


 留学生の方も分かったもので、その辺はうまくさばきながら話を進めていました。プレゼンも随分板についてきました。


 そんな中を、地元新聞社の記者の方が写真を撮ったり、留学生にインタビューなどをしていました。記者のインタビューにも割りと堂々と答えていた留学生の姿が印象的でした。


 読み聞かせが終わって、少し園児と遊んで、気がついたら30分ほどたってました。


 元気があるといっても、やはりプール遊びの後のこと。部屋の端のほうでは、またごろんとなる園児が2〜3人出てきました。


 あまり居座るとよくない。


 ということで、そろそろ引き上げることにしました。


 私達一行は、幼稚園の先生に挨拶をして教室へ向かいました。


 教室に戻ると、また例によって来週読み聞かせをする留学生にプレゼンの練習を指示しました。


 この授業も後2回で終わります。幼稚園も来週で最後。


 そこで私は、レポートの課題を提示した後、最後の授業をどうするか、留学生に聞いてみました。


「先生、パーティーしましょう。」


 それ、絶対言うと思った。まあ、いっか。今まで結構がんばったから。


「じゃあ、せっかくだから芸術文化の学生や国文学科の学生も呼ぼうか。いろいろお世話になったから。」


「いいですねえ。」


「じゃあ、締め切りまでにレポートを提出した人はパーティーに参加できます。みなさん、がんばってください。」


 一応、釘をさして今日の授業は終わりました。


 今度が最終回かあ。結構長かったなあ。


(本シリーズは、私が2005年前期に大学の授業「応用日本語U」で行った「留学生による自作紙芝居読み聞かせ活動」の授業記録です。)
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2007年09月17日

留学生による自作紙芝居読み聞かせ(18)「授業9日目(前半)」プールがあっても子どもは元気

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 今回は、自作紙芝居による読み聞かせの第2回目。


 例によって日本人学生3名に来てもらいました。幼稚園に行くまでの15分間、読み聞かせ組を中心にプレゼンの練習を行いました。


 ところで、前回園児の様子が今までと違うという話をしましたが、後から聞いた話によると、実は先週からプールが始まったのだそうです。(これは、以前も書きましたね。)


 そういや、うちの息子もそんなこと言ってたっけな。


 留学生の読み聞かせを見ていると、たいていの学生は原稿に目を縛られることなくプレゼンを行っています。


 日本人学生も−多少、遠慮しているのかもしれないが−あまりチェックを入れている様子はありません。


 ですが、よくよく聞いてみるとやはり発音上ひっかかる箇所が何箇所か出てくる。


 そこで私は、黒板に「アクセント」、「イントネーション」、「っ」「う」「ん」(いわゆる特殊拍)を板書し、この点を特に注意して練習するように留学生・日本人学生に促しました。


 そうこうしているうちに3時近くになったので、今日の読み聞かせ組をつれて幼稚園に向かいました。


 今回は全員が中国人。


 はたして、うまくいくだろうか。それとも園児はプールで遊び疲れてそれどころじゃなくなるだろうか。


 しかも、今日は地元の新聞社が取材に来ます。(そのときの記事がこちら。)


 幼稚園に着いて、いつもの教室に行ってみましたが誰もいません。


 すべての教室の椅子やら備品やらが全部外に出されていました。教室の所々で清掃会社の方がワックスをかけていました。


 「今日は向こうのお部屋なんです。」


 幼稚園の先生は、そう言って奥の広いホールを指差しました。


 この部屋は、入学式や生活発表会など、イベントをするときには必ず使われる、園で一番大きい部屋です。


 私たちは早速その部屋へ向かいました。


 部屋に着くと、20人ぐらいの園児が、ある子どもはごろんと横になり、またある子どもは起きて遊んでいました。


 が、私の顔を見るや半分ぐらいの子どもが「ワー」と突進してきて、キックやパンチの応酬。


 女児も男児も関係なく、足だのお尻だの股間だの背中だの、実に手厚い歓迎でした。前回より元気がよかったので、ちょっとほっとしました。


(本シリーズは、私が2005年前期に大学の授業「応用日本語U」で行った「留学生による自作紙芝居読み聞かせ活動」の授業記録です。)
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2007年09月16日

留学生による自作紙芝居読み聞かせ(17)「授業8日目(後半)」園児との掛け合いこそ読み聞かせの醍醐味

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 留学生の読み聞かせが流暢になったせいか、最初の組も10分程で終わってしまいました。そのころには園児のテンションもいつもに近いところまできていました。


「まだいけるかな。」


 私は残りの2人に読み聞かせをするよう指示しました。いつもならこの辺りから話に飽きてブロック遊びなどに走る園児が出てくるのですが、今日は久しぶりだったせいか、留学生の話を熱心に聴いていました。


 読み聞かせを始めてから20分ほどですべての話が終わりました。


「これで帰ったら子どもも寂しがるかな。でも、あまりバタバタ遊ばないほうがいいな。」


 そう思った私は、


「じゃあね、みなさん。お友達からね、プレゼントをもらったら、何て言うかな?」


 と振ってみました。(かなり苦し紛れのアドリブです。)


「あ・り・が・と・う!」


 大きな返事が返ってきました。


「そうだですね。じゃあ、中国語で『ありがとう』は何て言うのかな?」


「???」


「中国のお姉さん?何て言うの?」


 私はアイコンタクトを送りました。


「シェー・シェー」


「おもしろいねえ。じゃあ、みんなで大きな声で言ってみましょう。せーの。」


「シェー・シェー」


 割れんばかりの声が返ってきました。


「すごいねえ。じゃあ、スリランカでは何ていうのかな。」


「ストゥーティ!」


「ストゥーティ!」


 園児たちはおもしろがって大声で叫びました。


 こんな感じで「おやすみなさい」「こんにちは」「さようなら」などのあいさつを使って園児たちと交流しました。


 そして、3:30ごろ、私たちはちょっと早めに幼稚園を後にしました。


 帰る途中、スリランカの男子留学生が、


「先生、子どもの前で読むのは本当に難しいね。書いてあることを読んでも全然ダメね。」


 話の中身とは裏腹に、その顔は充実感にあふれていました。


「例えばね、わたしが読むでしょ。『かぼちゃの船が川に流されてしまいました。』ってね。

 そしたら、こどもがすぐに『おじいさんとおばあさんは、本当に困ってしまいました。』って言う。

 私が読むところ、子どもが先に分かって言っちゃう。

 だから、私、次読めないでしょ。

 仕方がないから『そうね。困っちゃったね。おじいさんとおばあさん、これからどうするかなあ?』って言う。

 そしたら、次に進める。これは難しい。」


 大人が淡々と子どもに読み聞かせる、それもそれでよさがあるでしょう。


 また、彼のように大人と子どもがシンクロしながら協同でストーリーテリングしていくのも読み聞かせのスタイルとしては非常におもしろいと思います。


 なかなかいい経験をしているな。


 教室のドアを開けると、学生たちはグループごとに読み聞かせの練習をしていました。


 そして「え、もう戻ってきたの?」という顔でこっちを見ていました。


 練習の様子を見ていると、その気になって取り組んでいる学生とそうでない学生とで歴然とした差があることに気がつきました。


 読み聞かせの練習というのは、まず羞恥心を拭い去ることからはじまります。


 ここをうまく克服できるとわりとスムーズに上達していく。


 ですが、この”人前で読む恥ずかしさ”から抜け出せないでいると、いつまでたっても上達しません。


 私は、しばらく机間巡視(最近は「机間指導」とか「机間支援」とか言うのだそうです。)をしながら指導を行いました。


 そして、残り15分ぐらいになったときでしょうか。メンバーの中でもとりわけ恥ずかしがり屋な中国人女子学生のいるグループにくっついて、集中的に指導を行いました。


 始めは体をくねらせながら、もじもじ読んでいた女子学生も、覚悟したのか、次第に筋の通ったプレゼンができるようになっていきました。


 こうして、今日の授業は終わりました。


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2007年09月15日

留学生による自作紙芝居読み聞かせ(16)「授業8日目(前半)」ん?園児に元気がない

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 最初からうすうすわかっていたことでしたが、結局、当日まで留学生を集めて読む練習をさせることはできませんでした。


 さて、ここで今までを振り返ってみると、留学生はみな市販の絵本での読み聞かせや園児との交流はすでに1度は経験したことになります。


 また、それぞれの紙芝居も全員完成することができました。その過程で日本人学生との交流もありました。


 以前に比べれば彼ら自身の交流の幅も随分広がっただろうし、また、この活動に対する取り組みも主体的になってきています。なにより、心がオープンになってきたように感じます。


 だからこそ、ここでしっかりと読む練習をし、プレゼンのレベルをアップさせ、本番では園児に喜んでもらえる、そういう感触を彼らに経験させてやりたい。


 そんな気持ちが私の中には強くあったわけです。


 ところが、これがなかなかうまくはいかない。とにかく時間がないのです。


 ふぅ〜。


 さて今回も授業が始まり出席をとります。幼稚園に行くまでには20分ぐらい余裕が。


 先週に引き続き国文学科の日本人学生が3名、助っ人として参加してくれました。


 私は早速、幼稚園に行く留学生に読む練習をするよう指示しました。


 練習している留学生を見ると、かつてのような単なる棒読みがかなり減っていて、なかなか様になっていました。聞くと、大半が家で練習してきたとのこと。


 なんとかいけるかな。


 私は若干胸をなでおろしました。


 3時近くになったので、留学生5名をつれて幼稚園に向かいました。


 道すがら留学生と話しながら最初に読む人を決めました。今回は最初に1人の留学生が園児全員の前で読み聞かせをし、その後、4人の留学生がそれぞれに分かれて読み聞かせをする段取りを考えていました。


 ところが、幼稚園に着くと園児の様子がいつもとちょっと違う。


 いつもなら、おやつが終わると「それ!」とばかりにおもちゃで遊んだり、外に飛び出そうとしたりするものなのに、今日は最初から敷物のうえで横になっていたり、タオルケットをおなかにかけてお昼寝体制に入っている園児が結構いました。


 全体の雰囲気もいつものような破天荒な感じはありません。


「先生、お昼寝してもいい?」

「いいよ。」


 やはり、様子がおかしい。


 考えてみれば、ここ数週間ほどは日差しも強く、本当に暑い日が続いていました。


 たまたま今日は雨が降りそうな天気だったので先生も園児を外に出さないように指導していたようでしたが、それ以前に少しバテ気味のよう。


 今日は早めに切り上げて帰ろう。


 私は予定を変更し、5人のうちまず3人に読み聞かせをさせ、そして残りの2人は様子を見ながらしばらく待機するよう指示しました。


 「みなさ〜ん。今日はね、外国のお兄さんやお姉さんが、みんなの知らない外国のお話をしてくれます。聞きたい人?」


 私が言うと、


 「は〜い。」


 わりと元気のいい声が返ってきました。


 「お話」と聞くと、それだけで大半の園児が興味を示します。私は園児を3つのグループに分け、それぞれ留学生に読み聞かせをさせました。


 始めはどうなることかと心配しましたが、紙芝居がはじまるとほとんどの園児がその手作りの絵に釘付けになっていました。


 また、留学生のプレゼンも随分うまくなっていて、それにつられて園児もますます元気を取り戻し、話にのめり込んでいきました。


 実は、後から知ったことなのですが、幼稚園ではこの週からプール(午前中)が始まったそうで、それで昼過ぎにはみんなグッタリしていたのだそうです。


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2007年09月14日

留学生による自作紙芝居読み聞かせ(15)「授業7日目(後半)」紙芝居作成。原稿の貼り位置はそこじゃない!

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 ただ、学生たちを見ていると、ある留学生は原稿のチェックを日本人学生にしてもらったり、またある留学生は日本人学生と話しながら絵を塗ったりしていました。


 この辺はうまくコミュニケーションが取れているようです。


 「後40分です。急いで作りなさい。」


 私は学生を急かした。


 「後30分です。出来た人は私のところに持ってきてください。確認します。」


 学生の顔にもかなり焦りの色が見え始めました。日本人の学生も必死で手伝っています。


 残り20分ぐらいから、完成した紙芝居を見せに来る学生が出てきました。


 ところが・・・、


 彼らの多くが全く同じ間違いをしていました。


 絵パネルの後ろに貼る原稿の位置が間違っているのです。


 紙芝居は複数の絵パネルを順番に後ろに繰りながら話を展開していくもの。だから一番前にある絵のときに読む原稿は、その絵の束の一番後ろに貼り付けておかなければなりません。


 なのに、多くの留学生は一番前にある絵のときに読む原稿を、まさにその絵パネルの裏に貼り付けているのです。他の絵パネルも同じ。


 これではスムーズに紙芝居を読むことができません。


 「はい、やり直し。」

 「え〜!!。」


 慌てて、原稿を絵パネルから剥がし、貼り直す。こんな学生が何人も出てきました。


「後10分です。」


 この時点で、完成しているのは全体の1/3程度。終わった学生は同じグループの学生の手伝いをしています。


 もはや、読む練習どころの騒ぎではありません。


 残り5分で、大多数の留学生が完成し、終了時にはほぼ全員が完成しました。


 「それでは、来週から幼稚園へ行きましょう。」


 私がそう言って、今日の授業は終わった。


 私は、授業の後、幼稚園に行って来週から読み聞かせが再開できることを伝えました。


 そして地元新聞社が取材に来る予定だが、それでもいいかたずねました。


 いずれについても幼稚園の先生には快く承諾していただきました。


 「幼稚園に行く前に、一回読む練習をさせたいなあ。」


 その時の私は、そのことで頭がいっぱいでした。


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2007年09月13日

留学生による自作紙芝居読み聞かせ(14)「授業7日目(前半)」読み練習の時間がない

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 5/31、6/7の授業では、幼稚園訪問を一時中断し、芸術文化の学生の助けを借りながら紙芝居の作成を行いました。


 6/7の段階での出来はまだ1/3程度。芸術文化の学生は、授業の関係で7日までの参加。(今日は6/14の授業内容を報告します。)


 幼稚園の先生には2週間だけ休むと伝えていたのですが、このままでは到底無理。今回も紙芝居の作成の続きをするしかありません。


 とはいえ、いつまでもこれに時間をかけるわけにもいきません。芸術文化の学生なしでちょっと大変ですが、今日の授業で全員の完成を目指します。


 私は、今日の授業に参加できる国文学科の日本人学生(日本語教育関係の授業を受講)を予め数名募っておきました。紙芝居が完成した留学生から随時読む練習に移らせ、それを日本人学生にチェックさせるためです。


 こうすれば、留学生のプレゼン能力は上がって児童のウケもよくなるだろうし、日本人学生にとっても外国人と接触する機会が増え日本語教育に関する関心も一層高まるだろう、と考えたわけです。


 授業は2:40から4:10まで。始めからプレゼンの練習は出来ないだろうから、日本人の学生には3:30ごろ来るように伝えていました。


 ところが、授業の始まるころにはすでに教室の前で待っている。


「それなら。」ということで、彼らに始めから参加してもらうことにしました。


 授業が始まり、開口一番、私は留学生に告げました。


 「今日中に紙芝居を全員完成させてください。

 来週から自分の紙芝居をもって幼稚園で読み聞かせをはじめます。

 もし、自分のグループの中で一人でも今日中に完成できなかった学生がいたら、そのグループは前期の成績が出ません。

 みなさん、急いでがんばってください。」


 「それから、早く終わった学生は読む練習をしてください。

 今日は国文学科の日本人の学生に来てもらいました。

 日本人の学生にチェックを受けて、自分の発音を治してください。」


 そして、自己紹介もそこそこに日本人学生をそれぞれのグループに散らばらせ、しばらくは紙芝居の作成の手伝いをしてもらいました。


 作業の進捗状況を見ていると、紙芝居を作り上げるのが精一杯で、とても読む練習までいきそうな雰囲気ではありません。


 「どうやって読む練習を確保しようか。」


 話の途中で園児から「はい、おしまい。」と言われるようでは、どうしようもありません。


 しかも、来週は地元の新聞社が取材に来る。だからというわけではないが、もう少し、さまにならないものか。


 私はそんなことばかり考えていました。


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2007年09月12日

留学生による自作紙芝居読み聞かせ(13)「授業6日目(後半)」ポイントは、相手を配慮した粘り強いコミュニケーション

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 留学生には悪いのですが、今回の読み聞かせ組みを連れて行くのは、ちょっと気が重かったのでした。


 というのは、彼らは発音があまり上手くなく、どちらかと言うと教師の前では口数の少ない留学生がほとんどだったからです。「まあ、でもいい経験にはなるか。」正直そんな気持ちでした。


 幼稚園に着くと、園児たちはおやつをすっかり食べ終え、ブロック遊びにふけっていました。とてもすぐに読み聞かせに入れる状態ではありません。


 私たちは園児をその気にさせようといろいろ話しかけたりしながら(幼稚園の先生にも助けていただきながら)、少しずつブロックを片付け、なんとか園児を一所に集めました。


 今日はいつもと違って始めから園児を3つのグループに分け、まず留学生3人にそれぞれ読み聞かせをさせました。


 ところが、私の予想に反して、今回の読み聞かせ組みは最初から「この絵、何の動物?」「これから、どうなるかなあ。」と問いかけたり、園児とアイコンタクトを図ったりしながら読み聞かせをしていました。


 先輩からいろいろ話を聞いて自分なりにいろいろ練習したのでしょう。その成果がしっかりと現れていました。


 ただ、今回は園児の半分ぐらいは、あまりお話を聞くモードではなかったようで、留学生も四苦八苦していました。こればかりはどうしようもありません。


 読み聞かせが一通り終わると、例によって園児と自由に遊びます。やはり園児にとってはこっちの方が楽しい。


 きりのいいところで幼稚園を切り上げ、先生方に挨拶をした後、私たちは教室に戻りました。


「ただいま、帰ってきました。」


 教室を見渡すと、上手くコミュニケーションが出来ていそうなグループもあれば、メンバー全員がうつむき加減な面持ちのグループもありました。


 「いや〜。思ったより結構難しいですね。」


 と、芸術文化科の先生。


「ただ原稿を12分割して絵を描く、と言うほど単純じゃないですね。原稿をしっかり読み込んで内容を十分理解しないといけない。例えば、一瞬の場面だけに使う絵もあるわけです。登場人物の服装なんかもいろいろ話さないとわからない。これは思った以上に大変です。」


 その通り。この活動の大きなねらいの一つががここ。この活動では、留学生と芸文の学生との一つ一つの確認作業が非常に重要なものになります。どっちかがどっちかにお任せではすみません。


 一つ一つのハードルを学生自身の力で根気強く乗り越えていかなければならないのです。


 当然のことながら、最初から上手くコミュニケーションが図れる保証などどこにもありません。


 ハリネズミの逸話ではありませんが、お互いの距離感や相手への配慮がなければ気持ちよく作業を進めていくことは出来ません。私が留学生に体感してもらいたかったのは、まさにその部分なのでした。


 最後に、グループごとに現在の進捗状況と次回の活動予定を報告してもらって今回の授業は終わりました。


(本シリーズは、私が2005年前期に大学の授業「応用日本語U」で行った「留学生による自作紙芝居読み聞かせ活動」の授業記録です。)
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2007年09月11日

留学生による自作紙芝居読み聞かせ(12)「授業6日目(前半)」留学生、もっと動け!

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 授業まであと3分ほど。私は教室に向かって階段を上っていました。


 すると目の前に、学生の集団が12〜13人。中には絵の具まみれの作業着を来た者もいました。そして、その先頭に先日学生の手配をお願いした芸術文化科の先生が。


 「あ、○○先生。」

 私はその先生の名前を呼びました。


「篠ア先生。学生を連れてきました。どこの教室に連れて行ったらいいですか。」

「え〜と、こっちです。」


 私は予め確保しておいた、いつもと違う広めの教室を指差しました。それから慌てて、留学生が待っているいつもの教室へ。


 留学生はすでに教室に集まっていました。


「今日は200番教室で授業します。もう芸術文化科の学生は来ています。

 今日の居残り組は、芸文の学生と相談しながらいっしょに紙芝居の絵を描いていきます。

 読み聞かせ組みは幼稚園に行きます。

 それでは、荷物を持って200番教室に行きましょう。」


 私はとりあえず留学生全員を200番教室へ連れて行くと、グループごとに着席させました。


 そして、芸術文化科の学生には正面の壇上にあがってもらいました。私は留学生に向かって言いました。


 「今日は芸術文化の学生の皆さんに来てもらいました。今日からみんなが作った昔話をもとに実際に紙芝居を作ります。

 ですが、芸術文化科の学生が全部の絵を描くわけではありません。自分で絵が描ける学生は、アドバイスを受けながらできるだけ自分で描いてください。

 どうしても自分でかけない学生は、芸術文化科の学生と相談しながら描いてもらいなさい。」


 「で、私たちは何をすればいいですか。」


 芸術文化科の学生から質問が出ました。


 そうか、こっちの学生には事前にちゃんと説明していなかった。


 「今まで留学生がそれぞれの国の昔話を原稿に書いてきました。今日はそれをもとに紙芝居を作ります。

 パネルは1つの話あたり8枚から12枚です。皆さんにはそれぞれのグループの中に入っていただいて、その手伝いをしてください。

 留学生は皆それぞれ下絵を書いてきています。それに沿って描いてください。」


 私はすぐそばにいた留学生に、

「絵、考えてきた?」

「いえ。」


 え?何だって?!


 隣の留学生も、その隣の留学生もまったく考えていない。絵は芸文の学生にすっかりお任せとでも思っているのだろうか。あれだけ念を押したのに。


 それでも何人かは下絵を描いてきた留学生もいました。


 私はスリランカの留学生が書いた下絵を芸文の学生に見せました。なかなかよく描けている。


 「お〜。すげ〜。俺たちすることないじゃん。」


 芸文の学生から驚きの声が。


 あ、いや。そうじゃなくて。みんなこんなんじゃないから。見せた例がよすぎたかな。


 ともかく、そんなこんなで芸術文化科の学生には1グループあたり2名程度入ってもらい、まずは昔話の読み込みと絵の打ち合わせから始めてもらいました。


 そして、私は芸文の先生にこの場を任せ、読み聞かせ組を連れて幼稚園に向かいました。


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2007年09月10日

留学生による自作紙芝居読み聞かせ(11)「授業5日目(後半)」読み聞かせ、実は結構難しい

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 私は、園児に分からないように他の留学生を集めて言いました。


 「この後、子どもを4つのグループに分けて皆さんに読み聞かせをしてもらいます。読むとき、必ず子どもの目を見ながら読みなさい。そして、絵本どおりに読まなくてもいいから、絵を使って子どもにいろいろ話しかけなさい。」


 聴いている学生の目は真剣でした。


 そうこうしているうちに、バングラシッシュの彼の読み聞かせが終わりました。聞き苦しいばかりの読み聞かせなのに、最後まで付き合ってくれる園児には、本当に頭が下がります。


 「初めてだからすごく緊張した。でも、次は大丈夫。たぶんできます。」


 その留学生は言いました。


「そうだね。初めてだからね。また、練習しよう。」


 私は答えました。


 それから、例によって園児を分散させ、残りの留学生に各自で読み聞かせをさせました。


 さっきの指示が利いたのか、学生は絵本を使って園児と積極的に関わろうと努力していました。


 後になって聞いた話ですが、幼稚園の子を持つお母さんでも、こういった場でちゃんと読み聞かせができる人というのは、なかなかいないのだそうです。


 自分の子どもにするならともかく、他人の子どもがたくさんいる中で話をするのは、緊張するし難しい。どうやってみんなの気持ちをずっとひきつけ続けるか、あるいは登場人物によって声を変えるかなど。


 考えてみれば、それだけの課題を私は留学生に課しているわけです。


 読み聞かせが一通り終わったので、これもまた例によって園庭でみんなと40分ほど遊びました。園児にとってはこっちのほうがはるかに楽しみのようでした。


 幼稚園を後にして、私たち一行は教室に戻りました。


 教室では、居残り組みが原稿の推敲をしていました。グループによっては、まだ済んでいないところもありました。


 「今度は、直した原稿を原稿用紙に書いて、土曜日までに出してください。」


 私はそう言って、原稿用紙を配った。


 「それから、紙芝居にする絵を考えておいてください。絵は芸術文化の学生に手伝ってもらいます。どんな絵を描いてもらいたいか、しっかり考えておいてください。」


 紙芝居の作成を通じて、他学科の学生(主に日本人学生)との交流を図るのが狙いです。


 ここで今日の授業は終わりあました。


 後日、芸術文化科の先生に協力してくれる学生をお願いしたところ、実に13名もの学生を用意していただきました。


 来週から本格的な紙芝居の製作に入ります。教室も広い部屋を確保しました。


(本シリーズは、私が2005年前期に大学の授業「応用日本語U」で行った「留学生による自作紙芝居読み聞かせ活動」の授業記録です。)
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2007年09月09日

留学生による自作紙芝居読み聞かせ(10)「授業5日目(前半)課題山積。企画倒れか?」

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 前回の宿題。締め切りは14日土曜日。この時点でまだ3人未提出。本来ならここでアウトなのですが、私はその学生を呼び出して言いました。


 「今のままだと、あなたに成績は出ません。あなただけじゃなく、宿題を出したあなたのグループのメンバー全員出ません。この授業は必修科目なので成績が出ないと卒業がとても難しいです。いいんですか。」


 なかば、というか完全に脅迫です。


 私は同じことを、3人が属するグループの他のメンバーにも告げました。


 彼らは慌てて、未提出の仲間に「早く出せ!」と詰め寄っていました。


 結局、授業開始10分ほど前に全員分が揃いました。学生らも随分反省していた様子だったので今回は大目に見ることにしました。


 授業の前に留学生の原稿を見て思ったのは、前回指摘したことが全く徹底されていないということ。


 普通体で、言葉も難しく、園児が入り込みやすい文章とはお世辞にも言えませんでした。


 きっと、このスタイルが、すっかりこびりついているんですね。


 そこで、今日の居残り組みには、グループ内で互いに原稿を読みあい、相互に推敲しあうよう指示しました。私は推敲のポイントを板書しました。


 ・普通体をていねい体に直す。
 ・難しい言葉、漢字2字の言葉や音読みの言葉は、
  簡単な言葉、訓読みの言葉に直す。
 ・長い文は、2つに切って短くする。



 とにかく、自分が読んで分からない言葉は使わない、スッと読んでスッと分かるような文を作るよう促しました。


 それから、私は読み聞かせ組みの5人を連れて幼稚園に向かいました。


 実は、今回の5人は密かに期待していました。


 というのは、このメンバーはわりと社交的な学生が多いこと、中にはこれまで弁論大会に出場したり、そこで賞をもらったりした留学生もいたからです。


「練習してきた?」

「はい、してきました。」

「そりゃ、いいねえ」


 幼稚園に着くと、園庭で遊んでいた園児を教室に入れました。そして、バングラディシュの学生に紙芝居をするよう指示しました。彼は紙芝居のボードを持って園児の前に立ちました。ところが、……


 緊張しているのか、それとも書いてある日本語を忠実に読もうとしたからか、紙芝居から片時も目を離さず読み進めています。


 しかも棒読み。紙芝居はしりとりをテーマにしたもの。だから、園児との掛け合いが非常に重要。なのに……


 「『リンゴ』。『ゴ』ノツギハ…。」

 「ゴリラ。」


 ある園児が大声で言いました。他の園児たちも次々に「ゴリラ」と叫びだしました。しかし、当の本人は全く聞こえていない。


 「……ナニカナ。ワカルカナ。カラダガオオキクテ、ノッシノッシアルクヨ。」


 心なしか白けムードが・・・。


「絵が見えな〜い。」


 園児からクレームが飛んできました。紙芝居の原稿に気を取られていたあまり、ボードを伏せてしまっていたのです。


 気が動転してしまったのか、彼は読み終わったボードを足元に置こうとしていました。


 そんなことしたら、次の原稿が読めないじゃないか!


 私は、心の中でそう叫びました。


 私は、彼に読み終わったボードを、紙芝居の一番後ろに持っていくよう手助けしました。そして、彼はまた続けて読み始めました。相変わらず、目は原稿を凝視したままです。


 こりゃ、ダメだ・・・。


 企画倒れかなあ・・・。


 そんな考えが、思わず脳裏をよぎったのでした。


(本シリーズは、私が2005年前期に大学の授業「応用日本語U」で行った「留学生による自作紙芝居読み聞かせ活動」の授業記録です。)
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2007年09月08日

留学生による自作紙芝居読み聞かせ(9)「授業4日目(後半)留学生の下手な日本語に園児は?」

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 5名は先週渡された絵本や紙芝居を携えています。今日の読み聞かせに備えて各自家で練習してきたのです。


 中には、意味や読みのわからない言葉をすべて辞書で調べてメモにしている学生もいました。


 小さな雑木林を左に曲がると、15mほど先に幼稚園の裏口があります。私たちはいつもここから園内に入っていきます。


 裏口のゲートにはすでに、4〜5人の男子園児が今か今かと待ち受けていました。


 すると、10m手前で急に中国人の女子留学生が路上に座り込んでしまいました。


 実は、彼女は前回の帰り際、男子園児に胸をわしづかみされるということがあって、彼女にとってはやはりそれなりのショックがあったようでした。


「先生、ちょっと待って。緊張。とても緊張。」


 前回のこと、そしてたくさんの園児の前で紙芝居を読むプレッシャーで立つことすらおぼつかない様子です。


「大丈夫。もう大丈夫です。」


彼女は立ち上がった。


 緊張しているのは彼女だけではありません。他の男子留学生もまた、座り込まないまでも声は上ずり、笑ってごまかす顔も引きつっていました。


 教室に入りました。園児は既におやつを食べ終わり、留学生が来るのを座って待っていました。今日のトトロ組は15人ほど。先週よりちょっと少ない感じです。


「みなさんこんにちは。今日はお兄さんやお姉さんが絵本や紙芝居を読んでくれます。みんなはお話聞くの好きかな?」


 私は園児に話しかけました。


「は〜い。」


 2/3ほどの園児は元気よく手を上げました。中には、前回のこともあってか、早く留学生と外で遊びたいと言いたげな園児もいました。


 「しまった。」


 その時、私は思いました。読む順番を決めてなかった。


 私はとっさに隣にいた中国人の男子留学生に最初に紙芝居を読むよう促しました。


 彼は体が固まったまま「はい。」とだけ答え、紙芝居と訳や漢字の読みがなを書いているであろう小さなメモをもって、園児の前に立ちました。


「ウ・サギ・ノ・ショボ・ダン。コ・ド・モ・タケ・デ・ヒー・ア・ソ・ビッタラ・ア・ウ・ナ・イ・ヨー。ボー・ク・ダジョブ。ヘ・キ・タ・ヨ。……」


 あまりにも…あまりにもたどたどしい。


 中国人学習者の発音上の特徴として特殊拍(「っ」「ん」「ー」)や清音と濁音(「゛」の有無)が上手く言えない、というのがありますが、そういった悪い癖がもろに出ていました。


「これは…。」


 わたしは園児もすぐに飽きて聞かなくなるだろうな、と思いました。


 実際、一番前に座っている男子園児が、ちょうど話の途中で「はい、おしまい。」と言うような一幕もありました。


 ところが、大半の園児たちは、聞きにくい話し振りであるにもかかわらず、食い入るように聞いていました。


 私は改めて、紙芝居の持つ力というものを実感しました。(っていうか、単につきあってくれていただけかも・・・。)


 最初の読み聞かせが終わったあと、残りの4人を教室のあちこちに配置させ、園児もほぼ均等に4つに分け、各々で読み聞かせをさせました。


 どの留学生もまだ緊張がとけないのか、ただ棒読みしている感じの学生もちらほら。


「絵本の文にこだわらなくてもいいから、とにかく子供にいろいろ語りかけるように話しなさい。」


 そう言って、私は絵本にある動物や植物を指差しては、園児に向かって「これ、何かな?」「何してるのかな?」と実演してみせました。


 20分ほどたって、読み聞かせも一段落ついたので、園庭に出て遊びました。


 ボールを使ったり、砂をいじったり、こういうときの子供は実に生き生きとしています。


 前回のこともあったので、今日は30分弱ほどで切り上げ、園児たちや先生にあいさつをして教室に戻りました。


 園児たちはちょっと物足りなさそうな感じでした。


 教室では居残り組みの留学生が原稿を作っていました。


 読み聞かせ組みに感想を言ってもらい、今週末までに原稿をメールで再提出するよう指示して、今日の授業は終わりました。


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2007年09月07日

留学生による自作紙芝居読み聞かせ(8)「授業4日目(前半)昔話はレポートじゃない」

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 先週のの土曜日には、ほぼ全員が昔話をメールで送ってよこしてきました。


 私はそれを紙芝居用に縦書きの書式に変更し、すべてプリントアウトをして授業の最初に配りました。留学生自身に推敲させるためです。


 「先生、日本語でワープロ打ってメールするのは大変です。とても時間がかかります。」


 と、ある中国人留学生。


 そんなことははじめから分かっている。まさにそれが狙い!


 国文学科の留学生に「メールで課題を出させるような授業がありますか。」と聞くと、きまって「ほとんどない。だいたいレポート用紙。」と答えます。


 だから、日本語でパソコンを使うのを苦手とする留学生が結構多い。中には、4年になるまで大学のパスワードすら取得していないという学生までいるのです。


 これでは、せっかく日本に留学したにもかかわらず、基本的なツールさえ使えないまま社会に出ることになってしまいます。


 ましてや国文学科。社会に出て恥ずかしい思いをするのは、誰でもない本人。


 これぐらいの技能はつけて欲しいところです。


 ですが、ここで問題にしたいのはそういうことではなく、


 彼らが書いた昔話の原稿の中には、園児にはかなり難しいと思われる表現やとっつきにくい言い回しが実に多いというところ。


 例えば、こんな感じ。


檀君神話

むかし、むかし。天地万物をつかさどる天帝、桓因(ハンイン)は、天から、はるか地上を見おろしていました。……(原文まま)


 また、普通体で書いているものも少なくありません。


 例えば、こんな感じ。


 カラスとキツネの物語

 民間に伝わるカラスとキツネの物語に伝えられている。  ある日、カラスは外へ食べ物えを探して、偶然においしい肉をみつけた。これはカラスによっていい事があった、だから、ことのほか機嫌がいいようだ、カラスは自分で探した肉を食べたがったから、人里離れた所の木の上に食べたとき、あいにくキツネこの木を通った。(原文まま)


 考えてみれば、彼らが普段触れる文章というのは、論文を読むにしろレポートを書くにしろ、とにかくかたいもの一辺倒。


 だから、こんなときにうまくレベルシフトができないのです。


「あのね、相手は幼稚園児。これじゃわからないよ。

 まず、漢字2字の言葉、音読みの言葉はやめて、ひらがなの言葉・訓読みの言葉に直しなさい。

 それから、普通体はやめて丁寧体で書きなさい。

 それから、文はできるだけ短くしなさい。」


 そこで、

 「じゃあ、『母親』はなんて言う」

 私が留学生に投げかけると、


 「母。」


 おーーーーい。


 すぐさま他の留学生が、


「お母さん。」


「そうそう、そういうふうに自分が書いた文を直していくんです。」


 そうこうしているうちに3時近くになったので、私は各グループから1名ずつ計5名を幼稚園に連れて行きました。残りの10名は教室で自分の原稿の推敲です。


 振り返ってみると、日頃指導をしている(産出技能としての)日本語というのは、レポート作成向けの厳密に定義された難解な書きことばか、自分と同世代か目上の人向けの、丁寧かそうでないかだけの話し言葉か、ぐらい。


 そりゃ、学生が戸惑うのも無理からぬことです。


 つくづく自分の普段の指導範囲の狭さを痛感したのでした。


 皆さんの所は、いかがですか?


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2007年09月06日

留学生による自作紙芝居読み聞かせ(7)「授業3日目(後編)留学生も興奮、園児も興奮」

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「あなたは砂場にいる子どもと一緒に遊びなさい。」

「あなたは鶏小屋にいる子どものところへ行きなさい。」

「あなたは雲梯をしている子どもを助けてあげなさい。」


 とにかく、少しでも多く接するよう促しました。


 少しずつ慣れてきたのか、そのうち何も言わなくても留学生のほうから自然に園児に話しかける光景が目立つようになり、30分たったころには、すっかりなじんでいる様子でした。


 授業の最初のころはぜんぜん乗る気ではなかった中国からの男子留学生も、気がついたら狭いウサギ小屋の中に入り込んで、園児と一緒に遊んでいました。


「先生、うさぎはかみますか。」


 彼なりに気を使いながら、楽しんでいる。


 また、バングラディッシュからの留学生は、

「先生、子どもがみんな私の名前を覚えました。」


 見ると、数人の園児が上り棒に上りながら、その学生の名前を連呼していました。


 そうこうしている間に、私は留学生に読み聞かせをさせる絵本と紙芝居を人数分選びました。


 どんな話が園児にウケるのか分からなかったので、とりあえず「おおきなかぶ」「ぐりとぐら」「桃太郎」といった定番は押さえておきました。


 幼稚園の先生によると、繰り返しの多い話は園児も熱心に聴くのだそうです。


 50分近くたったころでしょうか。私は留学生を集めて、そろそろ帰ろうと言いました。そして園児や幼稚園の先生方に挨拶をした後、留学生と一緒に大学の教室に戻りました。


 教室では、まず一人一人に絵本や紙芝居を配り、家で読む練習をしてくるように指示。それから、昔話を書いてきた(調べてきた)か確認しました。


 ほとんどの学生がしっかり宿題をこなしてきていましたが、みんな手書きで書いてきていたので、次の授業の前日までにメールで私のところに送るよう指示しました。


 ここで今日の授業は終わり。


 後から聞いた話ですが、あのときの園児の興奮は相当だったらしく、留学生が帰った後、幼稚園の先生は園児を部屋に集めて、気持ちが落ち着くまでしばらくビデオを見せたのだそうです。


 実は、園児の中には私の息子と娘もいました。で、その二人も興奮しすぎてその日の夕飯をろくに食べることができませんでした。


 ちょっとやりすぎたかな。


 もっと早く切り上げるべきだったと思う反面、お互いに打ち解けるにはそれなりの時間も必要とも思います。この辺の見極めは今後の課題です。


 それにしても、普段したことのないことを経験すると、学生の今まで知らなかった一面が見られたり、新しい発見や驚くことが本当にたくさんあります。


 と同時に、いかに日頃学生を一面的にしか見ていないか、そして、自分自身、いかに狭い世界で生きているか、痛感させられます。


 こういうことを肌で感じるって、結構大事かも・・。


 皆さんはいかがですか?


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2007年09月05日

留学生による自作紙芝居読み聞かせ(6)「授業3日目(前編)留学生、園児にたじたじ・・」

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 授業の前日である4月25日(月)、事前の打ち合わせをするため、私は幼稚園へ向かいました。


 打ち合わせは園長先生、担当の先生、そして私の3人で行ないました。


 この幼稚園は通常は朝9時から昼2時までですが、その後も6時ごろまで「トトロ」と称した預かり保育を行っています。日によって違うのですが大体15名程度の園児を預かっています。


 この「トトロ」を利用している園児が、私たちの読み聞かせの対象となるわけです。


 打ち合わせでは、幼稚園から学生分の絵本や紙芝居を貸していただくことや、当日の段取り等が話し合われました。また、園児との接し方についてアドバイスもいただきました。


 翌26日。


 15人の留学生を連れて幼稚園に向かいました。初めてのこととあって、やや緊張と興奮が入り混じった様子。


 とにかく笑顔を絶やさないこと、園児を必要以上に興奮させないように冷静に接すること等を事前に指導しました。


 幼稚園に着いたときはちょうどおやつの時間で、園児は板間の教室に座ってみかんを食べていました。


 おやつを食べ終わったころを見はからって幼稚園の先生が、

「今日はね、遠いところからお兄さんとお姉さんが来てくれました。みんなとお話したり遊んだり、お友達になりたいんだって。みなさん、なかよくできるかな。」


 15人の留学生が、ぞろぞろと教室の中に入ると、園児たちはそれに合わせるように座ったまま後ずさりしました。


 しかし、それもつかの間。ほどなくその距離は縮まっていき、少しずつお互い打ち解けていきました。


「それではみなさん、お外に出ましょう。」


 子どもと仲良くなるためには、まず一緒に遊ぶのが一番。男の子は走り系、女の子はままごと系。これが定番なのだそうです。


 留学生が靴を履くのにもたついている間に、園児は裸足のまま園庭に飛び出していきました。


 ある子は砂場で穴を掘り始め、ある子はブランコに直行。またある子は留学生めがけてサッカーボールを蹴り飛ばす。またある子は留学生に大分弁で今日あったことをしゃべりまくる。


「先生、子どもの日本語速いです。わかりません。」

「わからなくてもいいから、どんどん話にからみなさい。」


「先生、子どもも方言話しますか。」

「もちろん。雰囲気で分かりなさい。」


 はじめは、園児のエネルギーに圧倒されたのか、どう接したらいいのか分からず、ただ立ち尽くす留学生が大半でした。


 ・・・・・。


 こんなんで、読み聞かせなんかできるんだろうか・・・。


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2007年09月04日

留学生による自作紙芝居読み聞かせ(5)「授業2日目(後編)留学生、実はやる気満々」

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「あのね、相手は子どもだからね。笑顔で、やさしく読んであげてください。そして、子どもの目を見て、話しかけるように読んでください。」


 そういって、ちょっとだけ実演してみせました。すると、スリランカの留学生が下からなめあげるような言い方で、


「むかしねえ、あるところにねえ、おじいさんとねえ、おばあさんがねえ、いたんですよう。」


 大爆笑。クラスのボルテージは一気に沸点!


 朗読する面白さを全員に体感させたところで、今度は絵本の作成に向けて誰がどんな昔話を書くか、分担を決めます。


 今回のクラスは、中国12名、台湾1名、スリランカ1名、バングラディッシュ1名。


 基本的には自国の昔話を書くのですが、このままだと中国一色となり面白くありません。


 それぞれのグループも中国人以外の学生が1人いるかいないかです。


 そこで、グループのメンバーのうち1人(中国人学生)は他の外国人の知り合いにかけあって、中国以外の外国の昔話を来週までに調べてくるよう指示しました。


「先生、どれくらい書きますか。」

「読み終わるころには子どもが寝るくらい。あまり短いと『お兄ちゃん、もっと読んで、もっと読んで。』ってなって大変だから。」


「なるほどー。」

 一同関心する。


「先生、『三匹の子ぶた』知ってますか。」

「知ってるよ。っていうか、それ、中国の話じゃないじゃん。」


「先生、『うさぎとかめ』は?」

「それ、日本にもある。せっかくだから、日本人が知らないような話を書きましょう。」


 こうして、それぞれが何の話を書くか(あるいは調べてくるか)を決めて、今日の授業は終わり。


 ところで、別府大学には同じキャンパス内に附属幼稚園があります。この授業の2日後に園長先生から、読み聞かせをしてもいいという許可をいただきました。


 いよいよ、来週は実際に園児に混じって読み聞かせをします。果たしてどうなることやら。
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2007年09月03日

留学生による自作紙芝居読み聞かせ(4)「授業2日目(前編)留学生、桃太郎と会う」

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 授業2回目。前回はやや気まずい雰囲気のまま授業が終わってしまいました。でも大丈夫。ここから、怒涛の巻き返しを図ります。


 まず、留学生を3名ずつ、AからEまで5つのグループに分けました。


 というのも15名のままで授業を進めると、必ず手持ちぶたさな学生が何人か出てくるからです。


 そうなると、やがて彼らは宙に浮いた存在となり、ずるずるとドロップアウトしていってしまいます。そして他の学生にも悪い影響を及ぼしてしまう。


 では、どうしたらいいか。


 私は受講生を小分けにし、成績もグループ単位でつけるようにしました。


 そしてグループを構成するメンバーそれぞれに明確な役割を与え、その役割が充分果たせないと活動が進まず成績も出ないように授業を設計しました。


 こうすることで、一人の脱落者もなく学生全員の積極的かつ協調的な授業参加を促すことができるわけです。


 グループ分けに続いて、絵本「桃太郎」のカラーコピーを留学生全員に配りました。


「『桃太郎』の話、知ってる?」


 ちらほら。大半はあまり知らないようです(国文なのに、うぅ・・)。


「日本の子どもはこんな本を読んでいるのか。」

「日本語の教科書とはぜんぜん違う。」


 彼らは興味深げにページをめくりながら、誰からとなく読み始めました。


 そこで私は、グループのメンバー一人一人に、絵本を朗読する役、分からない言葉を調べる役、話を聞く子ども役を与え、読み聞かせの練習をするよう指示しました。


 すると学生は面白がって日本語の授業では出さないような大きな声で読み始めました。


 絵本だけに難しい言葉はほとんどなく、せいぜい「桃太郎どん」の「どん」、「頭のはち(=頭蓋骨のこと)」ぐらい。留学生でもすらすら読めます。


 なかなかいい感じ。


 と、ある中国人留学生が、


「ム・カ・シ、ム・カ・シ、ア・ル・ト・コ・ロ・ニ、オ・ジ・イ・サ・ン・ト……。」


 絵本をにらみつけながら読んでいた。


「ちょっと、もしもし。こわいよ。」


 と、私が言うとクラスは大爆笑。


 よし、つかんだ!


 私は内心、ホッと胸をなでおろしました。


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2007年09月02日

留学生による自作紙芝居読み聞かせ(3)「授業初日(後編)留学生、どん引き」

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「先生、幼稚園の子どもと何をしますか。」

「紙芝居の読み聞かせをするんです。皆さん幼稚園に行ったことがありますか。幼稚園の子どもと話したことがありますか。」


 ほとんどの学生は未経験。


「子どもの日本語は大人や教科書の日本語と違います。いろいろな日本語に触れるチャンスです。日本の教育制度の理解にもつながります。こんな経験はなかなかできません。皆さんの人生にも必ずプラスになります。どう?やってみよう。」


  興味を示す学生もいれば、あからさまにやりたくないという顔をする学生もいます。


 中には「私、漢字分からない。」と漏らす非漢字圏出身の留学生も。大丈夫、ひらがなばっかりだから。


 さらに話を続けます。


「それだけではありません。みなさんにも紙芝居を作ってもらいます。そしてそれで読み聞かせをします。いい紙芝居ができたらそれを絵本にして出版します。どうですか?さあ、みなさんがんばりましょう。」


「はあ?」

「紙芝居を作る?」

「出版する?」


 ある者は意味もなくノートをめくり始め、ある者は深くうなだれました。またある者は笑顔のまま固まっています。


 一瞬走る沈黙。


 とうとう、この空気に耐えられなくなくなった留学生が、


「とにかく、がんばってみましょう。」


 ここで時間になりました。とりあえず今日の授業は終わり。


 さて、これからどうやって授業を建て直し、彼らをその気にさせるか。


 その時は、まるで自分で自分の首を絞めているような感じでした。


 その時は。


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2007年09月01日

留学生による自作紙芝居読み聞かせ(2)「授業初日(前編)留学生、凍る」

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今日は授業の第1回目。事前の連絡が徹底していたためか全員出席。


 まずはじめに、履修科目の登録指導を行います。


 日本人学生でもそうですが、特に留学生の場合、自分にあった履修科目を選択し、登録用紙に記入して教務係に提出するという一連の行為を正確に行うのは、なかなか難しいものがあります。(ちなみにこれは2年前の話。現在はWEB登録システムになっています。)


 ここでつまづいてしまうと、後々までやっかいな問題がつきまとう。


 例えば、・・・


 自分の時間割がなかなか決まらない、

 うっかり必修科目を履修していなかった、

 せっかく試験まで受けたのに単位がなかった、などなど。


 場合によっては卒業認定に引っかかることもあります。


 そこで私の場合、受け持ちの留学生の履修パターンを予め調べておいて、パターン別に雛形を作ることにしています。


 そして、履修指導時には留学生にその雛形を写させ、その日のうちに教務課に提出するのです。


 2〜3週間ほどすると、学生一人一人の時間割(学生配布用)が教務課から打ち出されます。それを学生に配布する前に再度チェックし、もし誤りがあれば教務課に修正してもらう。


 こうして登録ミスがないことを確認した上で学生に配布し、本人にも履修内容を確認させるのです。


 一見めんどくさそうですが、この一手間を惜しまずやることによって、私も留学生も後々やっかいな問題に振り回されることなく、スムーズにそれぞれの活動を軌道に乗せることができるというわけです。


 このことは教師と留学生の信頼関係を築く意味でも非常に重要で、このような事務的作業をきっちりこなせる教員には、留学生も大きな信頼を寄せます。


 一連の事務作業を終えて、本題へ。授業内容を説明します。


「この授業では日本語の勉強はしません。教科書もありません。この授業のテーマは、『地域交流』です。みなさんは日本人と交流したいですか。」


 留学生から

 「それ、いいですねえ。」

 「楽しそうです。」

 といった声が出る。今のところ、つかみはオッケー。


 そしてある留学生が聞いてきました。


「先生、誰と交流しますか。」

幼稚園の子どもです。」


 「え?」

 「なにそれ」。


 教室に一瞬重たい空気が走る。一同唖然とする。


 それもそのはず。彼らが日本人との交流と聞いて即座に思い浮かべるのは、日本人学生や社会人との交流だからです。


 大学生が幼稚園の子どもと交流していったい何の意味があるのか。


 日本語が下手だからといってそこまでバカにしなくてもいいじゃないか。


 その時は、そういう風に感じた留学生も少なからずいたのではないかと思います。


 その時はね。


(本シリーズは、サイト「日本語教師篠崎大司研究室」で連載したものに若干の加筆・修正を加えたものです。だから、先を見ないでくださいね。)
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2007年08月31日

留学生による自作紙芝居読み聞かせ(1)「厄介な授業」

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 今回から新シリーズです。


 私が平成17年度から行っている「留学生による自作紙芝居読み聞かせ活動」の、まさに初年度の授業の様子をご紹介します。


 この活動は、留学生が自国の昔話で紙芝居を作成し、幼稚園で読み聞かせをするというもの。


 この活動を通して、日本人との国際交流を図ること、そして日本語力の向上も目指すのが目的です。


 今年で3年目になりますが、だいたいこんな感じで和気あいあいとやってます。


 留学生による自作紙芝居読み聞かせ活動


 「地域の外国人といっしょに国際交流活動をやってみたいんだけど、いいアイデアが浮かばない。」という方、参考にしていただければ幸いです。


 第1回の今日は、「厄介な授業」です。


 まずは、開講に先立って授業の位置づけやこれまでの様子について書こうと思います。


 別府大学文学部国文学科では、学科に在籍する留学生について学年ごとに担任を割り当て、週に1コマ開講される「応用日本語」の中で、授業の出席状況や生活状況の把握及び生活面から学習面まで様々な指導を行っています。


 私も17年度から、2年生(学生の数が多いので2グループに分け、他の先生と分担。授業は別々に開講。)の担当となり、「応用日本語U」を受け持つことになりました。


 私が担当する留学生は、全員で15名。内訳は中国12、台湾1、スリランカ1、バングラディシュ1。


 彼らは月曜から金曜の1限目から3限目まで(従って15コマ/週)は国文学科の中にある日本語課程で日本語を勉強します。


 そして、週に1回、火曜4限目に開講される「応用日本語U」に出席します。


 留学生の状況の把握や事務連絡等は、長くても30〜40分程度。その後の授業内容は当然のことながら担当教員に任されています。


 さて、この時間をどう使うか。


 これまで担当された先生方の多くは、日本語の指導にあてていたようです。


 それで、授業の様子などを他の先生方に聞いてみたところ、やはり随分苦労なさってきたようでした。


 最大の理由は、留学生の日本語力が一様ではないこと。初級レベルの学生から上級レベルの学生まで、様々なレベルの学力を持つ留学生が授業に参加します。


 従って授業のレベル設定がかなり難しく、どんなレベルに設定しても必ず「落ちこぼれ」や「浮きこぼれ」が出てくる。


 さらに、教員の専門性をどうからませるかを考えると、ますますわけがわからなくなってしまう。


 ちなみに私の専門は日本語教育学。


 学生は週15コマも日本語の勉強をしているわけで、その上さらに4限目まで日本語の勉強では、あまりにも芸がなさ過ぎます。


 では、どんな授業設計をすれば、日本語力に関係なくすべての学習者(そして私も)が満足でき、科目としても充実したものになるのか。


 「どうしよ。」


 しばらく私はなす術もなく、ボーっとしていました。


(本シリーズは、サイト「日本語教師篠崎大司研究室」で連載したものに若干の加筆・修正を加えたものです。)
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