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前回の宿題。締め切りは14日土曜日。この時点でまだ3人未提出。本来ならここでアウトなのですが、私はその学生を呼び出して言いました。
「今のままだと、あなたに成績は出ません。あなただけじゃなく、宿題を出したあなたのグループのメンバー全員出ません。この授業は必修科目なので成績が出ないと卒業がとても難しいです。いいんですか。」
なかば、というか完全に脅迫です。
私は同じことを、3人が属するグループの他のメンバーにも告げました。
彼らは慌てて、未提出の仲間に「早く出せ!」と詰め寄っていました。
結局、授業開始10分ほど前に全員分が揃いました。学生らも随分反省していた様子だったので今回は大目に見ることにしました。
授業の前に留学生の原稿を見て思ったのは、前回指摘したことが全く徹底されていないということ。
普通体で、言葉も難しく、園児が入り込みやすい文章とはお世辞にも言えませんでした。
きっと、このスタイルが、すっかりこびりついているんですね。
そこで、今日の居残り組みには、グループ内で互いに原稿を読みあい、相互に推敲しあうよう指示しました。私は推敲のポイントを板書しました。
・普通体をていねい体に直す。
・難しい言葉、漢字2字の言葉や音読みの言葉は、
簡単な言葉、訓読みの言葉に直す。
・長い文は、2つに切って短くする。
とにかく、自分が読んで分からない言葉は使わない、スッと読んでスッと分かるような文を作るよう促しました。
それから、私は読み聞かせ組みの5人を連れて幼稚園に向かいました。
実は、今回の5人は密かに期待していました。
というのは、このメンバーはわりと社交的な学生が多いこと、中にはこれまで弁論大会に出場したり、そこで賞をもらったりした留学生もいたからです。
「練習してきた?」
「はい、してきました。」
「そりゃ、いいねえ」
幼稚園に着くと、園庭で遊んでいた園児を教室に入れました。そして、バングラディシュの学生に紙芝居をするよう指示しました。彼は紙芝居のボードを持って園児の前に立ちました。ところが、……
緊張しているのか、それとも書いてある日本語を忠実に読もうとしたからか、紙芝居から片時も目を離さず読み進めています。
しかも棒読み。紙芝居はしりとりをテーマにしたもの。だから、園児との掛け合いが非常に重要。なのに……
「『リンゴ』。『ゴ』ノツギハ…。」
「ゴリラ。」
ある園児が大声で言いました。他の園児たちも次々に「ゴリラ」と叫びだしました。しかし、当の本人は全く聞こえていない。
「……ナニカナ。ワカルカナ。カラダガオオキクテ、ノッシノッシアルクヨ。」
心なしか白けムードが・・・。
「絵が見えな〜い。」
園児からクレームが飛んできました。紙芝居の原稿に気を取られていたあまり、ボードを伏せてしまっていたのです。
気が動転してしまったのか、彼は読み終わったボードを足元に置こうとしていました。
そんなことしたら、次の原稿が読めないじゃないか!
私は、心の中でそう叫びました。
私は、彼に読み終わったボードを、紙芝居の一番後ろに持っていくよう手助けしました。そして、彼はまた続けて読み始めました。相変わらず、目は原稿を凝視したままです。
こりゃ、ダメだ・・・。
企画倒れかなあ・・・。
そんな考えが、思わず脳裏をよぎったのでした。
(本シリーズは、私が2005年前期に大学の授業「応用日本語U」で行った「留学生による自作紙芝居読み聞かせ活動」の授業記録です。)


