留学生による自作紙芝居読み聞かせ(9)「授業4日目(後半)留学生の下手な日本語に園児は?」

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プロフィール

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名前:篠崎大司(1971年生まれ)
出身:愛媛県
性別:男
職業:日本語教師(別府大学准教授)
ウェブサイトURL:http://www.kanjifumi.jp
一言:日本語教師というのは、本当におもしろくてやりがいのある仕事だと思います。

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留学生による自作紙芝居読み聞かせ(9)「授業4日目(後半)留学生の下手な日本語に園児は?」

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 5名は先週渡された絵本や紙芝居を携えています。今日の読み聞かせに備えて各自家で練習してきたのです。


 中には、意味や読みのわからない言葉をすべて辞書で調べてメモにしている学生もいました。


 小さな雑木林を左に曲がると、15mほど先に幼稚園の裏口があります。私たちはいつもここから園内に入っていきます。


 裏口のゲートにはすでに、4〜5人の男子園児が今か今かと待ち受けていました。


 すると、10m手前で急に中国人の女子留学生が路上に座り込んでしまいました。


 実は、彼女は前回の帰り際、男子園児に胸をわしづかみされるということがあって、彼女にとってはやはりそれなりのショックがあったようでした。


「先生、ちょっと待って。緊張。とても緊張。」


 前回のこと、そしてたくさんの園児の前で紙芝居を読むプレッシャーで立つことすらおぼつかない様子です。


「大丈夫。もう大丈夫です。」


彼女は立ち上がった。


 緊張しているのは彼女だけではありません。他の男子留学生もまた、座り込まないまでも声は上ずり、笑ってごまかす顔も引きつっていました。


 教室に入りました。園児は既におやつを食べ終わり、留学生が来るのを座って待っていました。今日のトトロ組は15人ほど。先週よりちょっと少ない感じです。


「みなさんこんにちは。今日はお兄さんやお姉さんが絵本や紙芝居を読んでくれます。みんなはお話聞くの好きかな?」


 私は園児に話しかけました。


「は〜い。」


 2/3ほどの園児は元気よく手を上げました。中には、前回のこともあってか、早く留学生と外で遊びたいと言いたげな園児もいました。


 「しまった。」


 その時、私は思いました。読む順番を決めてなかった。


 私はとっさに隣にいた中国人の男子留学生に最初に紙芝居を読むよう促しました。


 彼は体が固まったまま「はい。」とだけ答え、紙芝居と訳や漢字の読みがなを書いているであろう小さなメモをもって、園児の前に立ちました。


「ウ・サギ・ノ・ショボ・ダン。コ・ド・モ・タケ・デ・ヒー・ア・ソ・ビッタラ・ア・ウ・ナ・イ・ヨー。ボー・ク・ダジョブ。ヘ・キ・タ・ヨ。……」


 あまりにも…あまりにもたどたどしい。


 中国人学習者の発音上の特徴として特殊拍(「っ」「ん」「ー」)や清音と濁音(「゛」の有無)が上手く言えない、というのがありますが、そういった悪い癖がもろに出ていました。


「これは…。」


 わたしは園児もすぐに飽きて聞かなくなるだろうな、と思いました。


 実際、一番前に座っている男子園児が、ちょうど話の途中で「はい、おしまい。」と言うような一幕もありました。


 ところが、大半の園児たちは、聞きにくい話し振りであるにもかかわらず、食い入るように聞いていました。


 私は改めて、紙芝居の持つ力というものを実感しました。(っていうか、単につきあってくれていただけかも・・・。)


 最初の読み聞かせが終わったあと、残りの4人を教室のあちこちに配置させ、園児もほぼ均等に4つに分け、各々で読み聞かせをさせました。


 どの留学生もまだ緊張がとけないのか、ただ棒読みしている感じの学生もちらほら。


「絵本の文にこだわらなくてもいいから、とにかく子供にいろいろ語りかけるように話しなさい。」


 そう言って、私は絵本にある動物や植物を指差しては、園児に向かって「これ、何かな?」「何してるのかな?」と実演してみせました。


 20分ほどたって、読み聞かせも一段落ついたので、園庭に出て遊びました。


 ボールを使ったり、砂をいじったり、こういうときの子供は実に生き生きとしています。


 前回のこともあったので、今日は30分弱ほどで切り上げ、園児たちや先生にあいさつをして教室に戻りました。


 園児たちはちょっと物足りなさそうな感じでした。


 教室では居残り組みの留学生が原稿を作っていました。


 読み聞かせ組みに感想を言ってもらい、今週末までに原稿をメールで再提出するよう指示して、今日の授業は終わりました。


(本シリーズは、私が2005年前期に大学の授業「応用日本語U」で行った「留学生による自作紙芝居読み聞かせ活動」の授業記録です。)

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