留学生による自作紙芝居読み聞かせ(8)「授業4日目(前半)昔話はレポートじゃない」

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プロフィール

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名前:篠崎大司(1971年生まれ)
出身:愛媛県
性別:男
職業:日本語教師(別府大学准教授)
ウェブサイトURL:http://www.kanjifumi.jp
一言:日本語教師というのは、本当におもしろくてやりがいのある仕事だと思います。

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留学生による自作紙芝居読み聞かせ(8)「授業4日目(前半)昔話はレポートじゃない」

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 先週のの土曜日には、ほぼ全員が昔話をメールで送ってよこしてきました。


 私はそれを紙芝居用に縦書きの書式に変更し、すべてプリントアウトをして授業の最初に配りました。留学生自身に推敲させるためです。


 「先生、日本語でワープロ打ってメールするのは大変です。とても時間がかかります。」


 と、ある中国人留学生。


 そんなことははじめから分かっている。まさにそれが狙い!


 国文学科の留学生に「メールで課題を出させるような授業がありますか。」と聞くと、きまって「ほとんどない。だいたいレポート用紙。」と答えます。


 だから、日本語でパソコンを使うのを苦手とする留学生が結構多い。中には、4年になるまで大学のパスワードすら取得していないという学生までいるのです。


 これでは、せっかく日本に留学したにもかかわらず、基本的なツールさえ使えないまま社会に出ることになってしまいます。


 ましてや国文学科。社会に出て恥ずかしい思いをするのは、誰でもない本人。


 これぐらいの技能はつけて欲しいところです。


 ですが、ここで問題にしたいのはそういうことではなく、


 彼らが書いた昔話の原稿の中には、園児にはかなり難しいと思われる表現やとっつきにくい言い回しが実に多いというところ。


 例えば、こんな感じ。


檀君神話

むかし、むかし。天地万物をつかさどる天帝、桓因(ハンイン)は、天から、はるか地上を見おろしていました。……(原文まま)


 また、普通体で書いているものも少なくありません。


 例えば、こんな感じ。


 カラスとキツネの物語

 民間に伝わるカラスとキツネの物語に伝えられている。  ある日、カラスは外へ食べ物えを探して、偶然においしい肉をみつけた。これはカラスによっていい事があった、だから、ことのほか機嫌がいいようだ、カラスは自分で探した肉を食べたがったから、人里離れた所の木の上に食べたとき、あいにくキツネこの木を通った。(原文まま)


 考えてみれば、彼らが普段触れる文章というのは、論文を読むにしろレポートを書くにしろ、とにかくかたいもの一辺倒。


 だから、こんなときにうまくレベルシフトができないのです。


「あのね、相手は幼稚園児。これじゃわからないよ。

 まず、漢字2字の言葉、音読みの言葉はやめて、ひらがなの言葉・訓読みの言葉に直しなさい。

 それから、普通体はやめて丁寧体で書きなさい。

 それから、文はできるだけ短くしなさい。」


 そこで、

 「じゃあ、『母親』はなんて言う」

 私が留学生に投げかけると、


 「母。」


 おーーーーい。


 すぐさま他の留学生が、


「お母さん。」


「そうそう、そういうふうに自分が書いた文を直していくんです。」


 そうこうしているうちに3時近くになったので、私は各グループから1名ずつ計5名を幼稚園に連れて行きました。残りの10名は教室で自分の原稿の推敲です。


 振り返ってみると、日頃指導をしている(産出技能としての)日本語というのは、レポート作成向けの厳密に定義された難解な書きことばか、自分と同世代か目上の人向けの、丁寧かそうでないかだけの話し言葉か、ぐらい。


 そりゃ、学生が戸惑うのも無理からぬことです。


 つくづく自分の普段の指導範囲の狭さを痛感したのでした。


 皆さんの所は、いかがですか?


(本シリーズは、私が2005年前期に大学の授業「応用日本語U」で行った「留学生による自作紙芝居読み聞かせ活動」の授業記録です。)

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