次に用意することは、場面に合ったロールカードを作るということです。
例えば、中級レベルの留学生が出会う場面として「試験前にノートを借りる」があるとすると、
〈ロールカード:中級〉
A:ここは図書館です。来週テストがあります。ですが、あ
なたは授業にあまり出ていません。友達のBさんにノー
トを借りてください。
B:ここは図書館です。来週テストがあります。友達のAさ
んがあなたのノートを借りに来ました。できるだけ断っ
てください。
と、ざっとこんな感じになるでしょうか。
ロールカード作成のコツですが、(タスクの内容にも依りますが)私は以下の点は盛り込むようにしています。
1.場所(=図書館)
2.背景(=来週テストがある)
3.AとBの人間関係(=友達)
4.場面・タスク(=ノートを借りる/断る)
で、今度はハードルを決めます。
このハードルの設定がタスクのキモの部分。非常に重要です。
場面設定もタスクのレベルに影響しますが、ハードルの設定こそがタスクのレベルを決定的なものにします。
ハードル設定によるレベル調整の基本は、その高さと量です。
「量」については、とりあえず10個ぐらい用意しておくといいと思います。後は学習者の出方によって調整してください。
「高さ」とはハードルの難易度な訳ですが、ハードルの種類は概ね以下の3種類ぐらいかなと考えています(これはあくまでも私のレパートリーです。)
5.疑問文
6.「それ、無理。」的発言
7.不意打ち質問
8.相手の言動へのツッコミ
「5.疑問文」は最も一般的なハードルです。
もちろん、質問の内容によってハードルの高さを調整することもできますが、疑問文のタイプでもかなり調整は可能です。
a.Yes-No疑問文
b.選択疑問文
c.疑問詞疑問文
d.「なぜ/どうして」疑問文(いわゆる理由要求の疑問文
)
e.「それ、どういうこと?」疑問文(いわゆる説明要求の
疑問文)
質問のレベルでいうと、aが一番やさしくeが一番難しいのが分かるでしょうか。
だから、(タスクのレベルによりますが)タスクの始めはa〜cぐらいにして、時々d(あるいはe)を持ってくるといいかなということになります。
しかし、疑問文ばかりのハードルだとまるで警察の職務質問みたいで、ちょっと不自然。そこで次のハードルが、
6.「それ、無理。」的発言
です。
これは、Aの要求を頭から突っぱねるような発言で、例えばこういうのです。
A:ノート、貸して。
B:いつ?
A:今。
B:今?今日、持ってきてないんだけど。(←これ)
A:え!・・・じゃあ、明日はどう?
ハードルのレベルはそこそこ高いんじゃないかと思います。Aは即座に対案を出さなければならないからです。
中級ぐらいになると、この手のハードルをじゃんじゃん出していくと、結構面白いタスクになると思います。
次に「7.不意打ち質問」です。
例えば、「試験前にノートを借りる」というタスクで言うと、一通り会話のやり取りを行った後、Bが
「え〜と、で、何の講義のノートだったっけ?」
と、会話の最初の方の内容を再度確認するようなタイプの質問です。
質問の内容自体はそんなに難しくないはずですが、会話の流れと全く関係なく出される、文字通り不意打ちの質問である分、Aにはそれなりの対応力が求められます。
最後は「8.相手の言動へのツッコミ」です。
例えば、
A:ノート貸して。
B:いやだよ。僕も使いたいんだから。
A:お願い!他に友達いないんだ!
B:静かに!ここは図書館だよ。(←ここ)
自分の言動を不意に注意されると、得てして人は動揺するものです。
このハードルの狙いは、動揺しないでちゃんと対応できるかどうかという点です。
これは、タスクの中に1つあるかないかぐらいでいいと思います
いかがでしょうか。
後は、実際に学習者の顔を思い浮かべて、「この質問なら、学習者は応えられるかなあ。」と考えながら、「応えられる。」「頑張ったら応えられる。」、「どうかなあ?」ぐらいのハードルを用意するといいと思います。
おっと、最後に一言。
「ハードルは、言葉は易しく、内容は難しめ。」
まずは、前回の宿題の場面にあったハードルを10個、考えてみてください。
とても貴重な財産になると思います。
◇ ◇ ◇
さて、次回の「ホントは簡単!会話の授業」は、・・・
(7)「このツッコミが学習者を鍛える」です。
どうぞ、お楽しみに。
参考文献:
『OPIの考え方に基づいた日本語教授法―話す能力を高めるために』
『ACTFL‐OPI入門―日本語学習者の「話す力」を客観的に測る』


