【徹底的にディテールにこだわる(後編)。】
メルマガ「篠研の日本語教育能力検定試験対策」より。
http://www.kanjifumi.jp/kyoshiyosei/nafl.htm----------------------------------------------------------------------
さて、前回、道場の忘年会で剣道の先生から
「竹刀は両手の小指で持ち、
足は、両親指の付け根で立つ。」
という印象深い話を聞いたという話をしました。
今回はその続き。
剣道の竹刀というと、両手でしっかり持って
力任せに振るというイメージをお持ちの方も
いらっしゃるかもしれませんが、
そんなガチガチだと、竹刀を振った時に
手首のスナップが利かず、剣先も前に伸びないし、
打った時に「パコーン!」といういい音も出ない。
第一、打たれた方は痛くて仕方がない。
決して一本につながる美しい打ちにはなりません。
そうではなくて、両手の小指だけでしっかり持って
他の指は竹刀の柄に添える程度にし、
肩から腕の力も極力抜いて振ると、
竹刀を振った時に肘が無理なくしっかり前に伸び、
手首のスナップが利いて、竹刀が前にグイーンと伸びて、
打った時に「パコーン!」といういい音が出、
しかも、打たれた相手も痛くない。
一本につながる美しい打ちができるわけです。
と、ここまでは普段の稽古でもよく言われること。
ですが、今回初めて聞いたのは、後半の
「足は、両親指の付け根で立つ。」
剣道では、右足のかかとは紙一枚程度浮かせ、
左足のかかとはそれよりもやや上げて立つわけですが、
いつどんな状況でも、相手より早く瞬時に打てるような
体制でいるためには、
重心の位置や両足の前後左右の幅、両足にかける
体重の割合など、下半身の使い方がとても重要です。
(ちなみに、私は未だに足の使い方は下手です。爆)
で、忘年会で私の両脇にいた六段の先生と
七段の先生は揃って、
「足は、両親指の付け根で立つといい。」
とおっしゃいました。
どうしてと聞くと、
「両足指の付け根で立つと、腰がしっかり
膝に乗って、スムーズに打てる。」と。
足の腹で立ってもダメ。
足の指全体で立ってもダメ。
親指の腹で立ってもダメ。
立つのは、親指の付け根。
そこから1cm前でも後ろでもダメ。
何という徹底したディテールへのこだわり。
普段あまり意見が合いそうもないお二人が
揃って同じことをおっしゃったことに驚いた私は、
「どうやってそこまで辿り着いたんですか。」
と聞いたところ、これもお二人が同じ答え。
「1つは、稽古会で八段の先生から教えてもらったこと。
もう1つは自分の経験。試行錯誤を繰り返した結果。」
私は、徹底的にこだわり抜くと結局こうなるのかと、
思わずため息をついたのでした。
剣道は、みなそれぞれ体格も違うし剣風も違う。
だから、先生の教えをそのままやったからといって
直ちにうまくできるわけではありません。
ですが、それはそれとしてまずは言われたとおりに
やってみる。
その素直さがとても大切です。
そして、しっくりこない場合は、自分なりに
少しずつ微調整する。
そうやって、徹底的にディテールにこだわって
微調整と試行錯誤を繰り返した結果、
もとの先生の教えに一番忠実な動作で落ち着いた、
ということもよくあるのです。
これは、日本語教育、特に教師の自己成長にも
言えることだと思います。
研修会とかセミナーがあれば、できる限り参加して
その道の専門家から直に話を聞く。教えを乞う。
これは本当に大事なことです。
しかし、それで、
「だいたいわかった。こんなもんか。」
で終わったらまったく意味がない。
大事なのは、教わったことや仕入れた知識を
自分のフィールドで実際に試してみるということ。
そして、
「やっぱりうちの学校ではダメだな。」
と簡単に投げ出さずに、
それならそれで、じゃあどうやったらうまくいくか
自分なりに考えて、調整と試行錯誤を繰り返す。
徹底的にディテールにこだわって完成度を高め、
自分なりのスタイルを作っていく。
これがとても大事なことです。
多くの人は、セミナーに進んで参加しようとはしないし、
参加してもそれを実践する方は本当に少ない。
ですが、それでは永続的な成長は望めません。
インプットしたら必ず実践する。
そして、徹底的にディテールにこだわることで
自分のスタイルを確立していく。
日本語教師を10年続けるためには、
必要不可欠なマインドだと思います。
来年の目標づくりの参考になれば。
……来年は篠研セミナーしたいな。
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