2007年09月06日

留学生による自作紙芝居読み聞かせ(7)「授業3日目(後編)留学生も興奮、園児も興奮」

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「あなたは砂場にいる子どもと一緒に遊びなさい。」

「あなたは鶏小屋にいる子どものところへ行きなさい。」

「あなたは雲梯をしている子どもを助けてあげなさい。」


 とにかく、少しでも多く接するよう促しました。


 少しずつ慣れてきたのか、そのうち何も言わなくても留学生のほうから自然に園児に話しかける光景が目立つようになり、30分たったころには、すっかりなじんでいる様子でした。


 授業の最初のころはぜんぜん乗る気ではなかった中国からの男子留学生も、気がついたら狭いウサギ小屋の中に入り込んで、園児と一緒に遊んでいました。


「先生、うさぎはかみますか。」


 彼なりに気を使いながら、楽しんでいる。


 また、バングラディッシュからの留学生は、

「先生、子どもがみんな私の名前を覚えました。」


 見ると、数人の園児が上り棒に上りながら、その学生の名前を連呼していました。


 そうこうしている間に、私は留学生に読み聞かせをさせる絵本と紙芝居を人数分選びました。


 どんな話が園児にウケるのか分からなかったので、とりあえず「おおきなかぶ」「ぐりとぐら」「桃太郎」といった定番は押さえておきました。


 幼稚園の先生によると、繰り返しの多い話は園児も熱心に聴くのだそうです。


 50分近くたったころでしょうか。私は留学生を集めて、そろそろ帰ろうと言いました。そして園児や幼稚園の先生方に挨拶をした後、留学生と一緒に大学の教室に戻りました。


 教室では、まず一人一人に絵本や紙芝居を配り、家で読む練習をしてくるように指示。それから、昔話を書いてきた(調べてきた)か確認しました。


 ほとんどの学生がしっかり宿題をこなしてきていましたが、みんな手書きで書いてきていたので、次の授業の前日までにメールで私のところに送るよう指示しました。


 ここで今日の授業は終わり。


 後から聞いた話ですが、あのときの園児の興奮は相当だったらしく、留学生が帰った後、幼稚園の先生は園児を部屋に集めて、気持ちが落ち着くまでしばらくビデオを見せたのだそうです。


 実は、園児の中には私の息子と娘もいました。で、その二人も興奮しすぎてその日の夕飯をろくに食べることができませんでした。


 ちょっとやりすぎたかな。


 もっと早く切り上げるべきだったと思う反面、お互いに打ち解けるにはそれなりの時間も必要とも思います。この辺の見極めは今後の課題です。


 それにしても、普段したことのないことを経験すると、学生の今まで知らなかった一面が見られたり、新しい発見や驚くことが本当にたくさんあります。


 と同時に、いかに日頃学生を一面的にしか見ていないか、そして、自分自身、いかに狭い世界で生きているか、痛感させられます。


 こういうことを肌で感じるって、結構大事かも・・。


 皆さんはいかがですか?


(本シリーズは、私が2005年前期に大学の授業「応用日本語U」で行った「留学生による自作紙芝居読み聞かせ活動」の授業記録です。)
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2007年09月05日

留学生による自作紙芝居読み聞かせ(6)「授業3日目(前編)留学生、園児にたじたじ・・」

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 授業の前日である4月25日(月)、事前の打ち合わせをするため、私は幼稚園へ向かいました。


 打ち合わせは園長先生、担当の先生、そして私の3人で行ないました。


 この幼稚園は通常は朝9時から昼2時までですが、その後も6時ごろまで「トトロ」と称した預かり保育を行っています。日によって違うのですが大体15名程度の園児を預かっています。


 この「トトロ」を利用している園児が、私たちの読み聞かせの対象となるわけです。


 打ち合わせでは、幼稚園から学生分の絵本や紙芝居を貸していただくことや、当日の段取り等が話し合われました。また、園児との接し方についてアドバイスもいただきました。


 翌26日。


 15人の留学生を連れて幼稚園に向かいました。初めてのこととあって、やや緊張と興奮が入り混じった様子。


 とにかく笑顔を絶やさないこと、園児を必要以上に興奮させないように冷静に接すること等を事前に指導しました。


 幼稚園に着いたときはちょうどおやつの時間で、園児は板間の教室に座ってみかんを食べていました。


 おやつを食べ終わったころを見はからって幼稚園の先生が、

「今日はね、遠いところからお兄さんとお姉さんが来てくれました。みんなとお話したり遊んだり、お友達になりたいんだって。みなさん、なかよくできるかな。」


 15人の留学生が、ぞろぞろと教室の中に入ると、園児たちはそれに合わせるように座ったまま後ずさりしました。


 しかし、それもつかの間。ほどなくその距離は縮まっていき、少しずつお互い打ち解けていきました。


「それではみなさん、お外に出ましょう。」


 子どもと仲良くなるためには、まず一緒に遊ぶのが一番。男の子は走り系、女の子はままごと系。これが定番なのだそうです。


 留学生が靴を履くのにもたついている間に、園児は裸足のまま園庭に飛び出していきました。


 ある子は砂場で穴を掘り始め、ある子はブランコに直行。またある子は留学生めがけてサッカーボールを蹴り飛ばす。またある子は留学生に大分弁で今日あったことをしゃべりまくる。


「先生、子どもの日本語速いです。わかりません。」

「わからなくてもいいから、どんどん話にからみなさい。」


「先生、子どもも方言話しますか。」

「もちろん。雰囲気で分かりなさい。」


 はじめは、園児のエネルギーに圧倒されたのか、どう接したらいいのか分からず、ただ立ち尽くす留学生が大半でした。


 ・・・・・。


 こんなんで、読み聞かせなんかできるんだろうか・・・。


(本シリーズは、私が2005年前期に大学の授業「応用日本語U」で行った「留学生による自作紙芝居読み聞かせ活動」の授業記録です。)
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2007年09月04日

留学生による自作紙芝居読み聞かせ(5)「授業2日目(後編)留学生、実はやる気満々」

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「あのね、相手は子どもだからね。笑顔で、やさしく読んであげてください。そして、子どもの目を見て、話しかけるように読んでください。」


 そういって、ちょっとだけ実演してみせました。すると、スリランカの留学生が下からなめあげるような言い方で、


「むかしねえ、あるところにねえ、おじいさんとねえ、おばあさんがねえ、いたんですよう。」


 大爆笑。クラスのボルテージは一気に沸点!


 朗読する面白さを全員に体感させたところで、今度は絵本の作成に向けて誰がどんな昔話を書くか、分担を決めます。


 今回のクラスは、中国12名、台湾1名、スリランカ1名、バングラディッシュ1名。


 基本的には自国の昔話を書くのですが、このままだと中国一色となり面白くありません。


 それぞれのグループも中国人以外の学生が1人いるかいないかです。


 そこで、グループのメンバーのうち1人(中国人学生)は他の外国人の知り合いにかけあって、中国以外の外国の昔話を来週までに調べてくるよう指示しました。


「先生、どれくらい書きますか。」

「読み終わるころには子どもが寝るくらい。あまり短いと『お兄ちゃん、もっと読んで、もっと読んで。』ってなって大変だから。」


「なるほどー。」

 一同関心する。


「先生、『三匹の子ぶた』知ってますか。」

「知ってるよ。っていうか、それ、中国の話じゃないじゃん。」


「先生、『うさぎとかめ』は?」

「それ、日本にもある。せっかくだから、日本人が知らないような話を書きましょう。」


 こうして、それぞれが何の話を書くか(あるいは調べてくるか)を決めて、今日の授業は終わり。


 ところで、別府大学には同じキャンパス内に附属幼稚園があります。この授業の2日後に園長先生から、読み聞かせをしてもいいという許可をいただきました。


 いよいよ、来週は実際に園児に混じって読み聞かせをします。果たしてどうなることやら。
posted by kanjifumi at 11:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 授業−私のやり方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月03日

留学生による自作紙芝居読み聞かせ(4)「授業2日目(前編)留学生、桃太郎と会う」

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 授業2回目。前回はやや気まずい雰囲気のまま授業が終わってしまいました。でも大丈夫。ここから、怒涛の巻き返しを図ります。


 まず、留学生を3名ずつ、AからEまで5つのグループに分けました。


 というのも15名のままで授業を進めると、必ず手持ちぶたさな学生が何人か出てくるからです。


 そうなると、やがて彼らは宙に浮いた存在となり、ずるずるとドロップアウトしていってしまいます。そして他の学生にも悪い影響を及ぼしてしまう。


 では、どうしたらいいか。


 私は受講生を小分けにし、成績もグループ単位でつけるようにしました。


 そしてグループを構成するメンバーそれぞれに明確な役割を与え、その役割が充分果たせないと活動が進まず成績も出ないように授業を設計しました。


 こうすることで、一人の脱落者もなく学生全員の積極的かつ協調的な授業参加を促すことができるわけです。


 グループ分けに続いて、絵本「桃太郎」のカラーコピーを留学生全員に配りました。


「『桃太郎』の話、知ってる?」


 ちらほら。大半はあまり知らないようです(国文なのに、うぅ・・)。


「日本の子どもはこんな本を読んでいるのか。」

「日本語の教科書とはぜんぜん違う。」


 彼らは興味深げにページをめくりながら、誰からとなく読み始めました。


 そこで私は、グループのメンバー一人一人に、絵本を朗読する役、分からない言葉を調べる役、話を聞く子ども役を与え、読み聞かせの練習をするよう指示しました。


 すると学生は面白がって日本語の授業では出さないような大きな声で読み始めました。


 絵本だけに難しい言葉はほとんどなく、せいぜい「桃太郎どん」の「どん」、「頭のはち(=頭蓋骨のこと)」ぐらい。留学生でもすらすら読めます。


 なかなかいい感じ。


 と、ある中国人留学生が、


「ム・カ・シ、ム・カ・シ、ア・ル・ト・コ・ロ・ニ、オ・ジ・イ・サ・ン・ト……。」


 絵本をにらみつけながら読んでいた。


「ちょっと、もしもし。こわいよ。」


 と、私が言うとクラスは大爆笑。


 よし、つかんだ!


 私は内心、ホッと胸をなでおろしました。


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2007年09月02日

留学生による自作紙芝居読み聞かせ(3)「授業初日(後編)留学生、どん引き」

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「先生、幼稚園の子どもと何をしますか。」

「紙芝居の読み聞かせをするんです。皆さん幼稚園に行ったことがありますか。幼稚園の子どもと話したことがありますか。」


 ほとんどの学生は未経験。


「子どもの日本語は大人や教科書の日本語と違います。いろいろな日本語に触れるチャンスです。日本の教育制度の理解にもつながります。こんな経験はなかなかできません。皆さんの人生にも必ずプラスになります。どう?やってみよう。」


  興味を示す学生もいれば、あからさまにやりたくないという顔をする学生もいます。


 中には「私、漢字分からない。」と漏らす非漢字圏出身の留学生も。大丈夫、ひらがなばっかりだから。


 さらに話を続けます。


「それだけではありません。みなさんにも紙芝居を作ってもらいます。そしてそれで読み聞かせをします。いい紙芝居ができたらそれを絵本にして出版します。どうですか?さあ、みなさんがんばりましょう。」


「はあ?」

「紙芝居を作る?」

「出版する?」


 ある者は意味もなくノートをめくり始め、ある者は深くうなだれました。またある者は笑顔のまま固まっています。


 一瞬走る沈黙。


 とうとう、この空気に耐えられなくなくなった留学生が、


「とにかく、がんばってみましょう。」


 ここで時間になりました。とりあえず今日の授業は終わり。


 さて、これからどうやって授業を建て直し、彼らをその気にさせるか。


 その時は、まるで自分で自分の首を絞めているような感じでした。


 その時は。


posted by kanjifumi at 20:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 授業−私のやり方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月01日

留学生による自作紙芝居読み聞かせ(2)「授業初日(前編)留学生、凍る」

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今日は授業の第1回目。事前の連絡が徹底していたためか全員出席。


 まずはじめに、履修科目の登録指導を行います。


 日本人学生でもそうですが、特に留学生の場合、自分にあった履修科目を選択し、登録用紙に記入して教務係に提出するという一連の行為を正確に行うのは、なかなか難しいものがあります。(ちなみにこれは2年前の話。現在はWEB登録システムになっています。)


 ここでつまづいてしまうと、後々までやっかいな問題がつきまとう。


 例えば、・・・


 自分の時間割がなかなか決まらない、

 うっかり必修科目を履修していなかった、

 せっかく試験まで受けたのに単位がなかった、などなど。


 場合によっては卒業認定に引っかかることもあります。


 そこで私の場合、受け持ちの留学生の履修パターンを予め調べておいて、パターン別に雛形を作ることにしています。


 そして、履修指導時には留学生にその雛形を写させ、その日のうちに教務課に提出するのです。


 2〜3週間ほどすると、学生一人一人の時間割(学生配布用)が教務課から打ち出されます。それを学生に配布する前に再度チェックし、もし誤りがあれば教務課に修正してもらう。


 こうして登録ミスがないことを確認した上で学生に配布し、本人にも履修内容を確認させるのです。


 一見めんどくさそうですが、この一手間を惜しまずやることによって、私も留学生も後々やっかいな問題に振り回されることなく、スムーズにそれぞれの活動を軌道に乗せることができるというわけです。


 このことは教師と留学生の信頼関係を築く意味でも非常に重要で、このような事務的作業をきっちりこなせる教員には、留学生も大きな信頼を寄せます。


 一連の事務作業を終えて、本題へ。授業内容を説明します。


「この授業では日本語の勉強はしません。教科書もありません。この授業のテーマは、『地域交流』です。みなさんは日本人と交流したいですか。」


 留学生から

 「それ、いいですねえ。」

 「楽しそうです。」

 といった声が出る。今のところ、つかみはオッケー。


 そしてある留学生が聞いてきました。


「先生、誰と交流しますか。」

幼稚園の子どもです。」


 「え?」

 「なにそれ」。


 教室に一瞬重たい空気が走る。一同唖然とする。


 それもそのはず。彼らが日本人との交流と聞いて即座に思い浮かべるのは、日本人学生や社会人との交流だからです。


 大学生が幼稚園の子どもと交流していったい何の意味があるのか。


 日本語が下手だからといってそこまでバカにしなくてもいいじゃないか。


 その時は、そういう風に感じた留学生も少なからずいたのではないかと思います。


 その時はね。


(本シリーズは、サイト「日本語教師篠崎大司研究室」で連載したものに若干の加筆・修正を加えたものです。だから、先を見ないでくださいね。)
posted by kanjifumi at 22:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 授業−私のやり方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする